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2005.09.27

ノミ、サーカスへゆく

20041121_048 猫の毛の中に住みついたノミたちの物語である、金井美恵子・文、金井久美子・絵『ノミ、サーカスへゆく』(角川春樹事務所)。姉妹によるおかしくて楽しい絵本となっている。収録作品は「ふかふかのもりの(猫の)うち」「ノミ、サーカスへゆく」と、豚にまつわる話である「ホッグの初恋」「豚」の4作品。子供時代にあれこれと想像をめぐらせた物語なのか、実際に体験した思い出がベースなのか。“全てが子供時代のちょっとした記憶で出来上がっているというわけではない”というあとがきの言葉を読むと、どちらでもよいことなのに様々な事柄を思い浮かべてしまう。あまのじゃくな心をがっしり掴まれてしまったのかもしれない。

 ノミが主人公の物語は、何とも滑稽で面白い。小さな世界ながら周囲の変化や出会いによって、少しずつ視野を広げていく過程。必死に<うち>であり<トラー>であり<ふかふか>であり<もり>であり<おうち>であり<ネコ>であり<ミュウミュウ>である毛にしがみつく様子。だれも知らないサーカスを夢見る気持ち。それらがとっても愛おしく感じられる。そして、文面の端々で小さく描かれているノミの絵が、すごくいいのだ。ゴミ?何かのカス?なんて思って、こすってしまうほど小さな絵。ノミって可愛かったのだなぁ…

 可愛いという思いと同時に浮かんできたのは、ノミをつぶしたときの“プチッ”という音。この物語を読み終えた私は、自分があまりに残酷にノミの命を奪っていたことに罪の意識を少々覚えた。せっかく見つけた居心地の良さそうな柔らかな猫の毛から、突然つまみ出されたかと思えば、あっと驚く間もなく殺されてしまう…なんて。そんなノミと猫がワクワクしながら、“サーカスってでも、痛くない?”、“ぜんぜん”、“たぶん、すごくおいしいものなんだと思うわ”という会話をしていると思えばなおさらのこと。ほんのりとノスタルジィに浸りつつ。

4894569299ノミ、サーカスへゆく
金井 美恵子
角川春樹事務所 2001-07

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