« ノミ、サーカスへゆく | トップページ | 悪意の手記 »

2005.09.29

厭世フレーバー

20050930_065 “家族の崩壊と再生をポップに描いた作品”ということだったので、どの程度のポップさなのかと意地悪く読み始めた、三羽省吾・著『厭世フレーバー』(文藝春秋)。こんな読み方は普段はしないのだけれど、“家族モノ”があまり好きではないことに加えて“十四歳”というタイトルの章があったゆえ。一時期“十四歳”というのは書き尽くされた感があるし、あえて“十四歳”にしなくてもいいのでは?という気がするし、個人的な“十四歳”に纏わる苦い思いが甦る可能性があるし…などという、あまりに勝手な思いのせいで。読み終えたら、私の器や存在なんて笑っちゃうくらいだったが。そう、要は「とっても面白かった」というわけ。

 リストラされて突然失踪してしまった父親。残された家族は、それぞれ思い思いに自分の行く道&来た道について考えることになる。14歳のケイなりに、17歳のカナなりに、27歳のリュウなりに、42歳の薫なりに、73歳の新造なりに。苛立ちながら、がむしゃらになりながら、ときには怠惰になりながら、確実に進んでゆく。きっと、前にも後ろにも。進んでいるそのときには見えなかったことが、はっきりと見えるようになる日。そういう日が訪れていることを、私はいつまでも気がつかないフリをしているのかもしれない。何ものにも属さない自由を欲しがって、青年期を延長しているような…宙ぶらりんの自分を省みる必要性を感じる物語。あくまでもライトに。

 家族の物語の中で、私が心を寄せてしまったのは「十七歳」の章。折り合いをつけるにはまだまだ若過ぎるし、強気な発言をするには自分の立場の弱さを知っている。そう考えると、安易でも妥当な心の寄せ方なのだろうか。それに、17歳のカナの人との付き合い方がとても似ていたのだ。“特に誰かと仲がいいワケじゃないのに、みんなと普通に話が出来る”というのと“一人でも平気”というのが。気がつけば、私はずっとそう思われてきていた。本当は、決して平気なのではない。適当な付き合いが上手なわけでもない。ただ自分を装っていただけ。強いフリをする術が、ヤワな心を隠してくれるような気がしただけ。あくまでも私の場合は。

 そして、もうひとつ。“何も言わないということは、人として物凄く卑怯”という言葉。これは、カナの父への気持ち。同感だというのではないのだが、この言葉を私は12歳の時に言われたことある。恨む人リスト(※そんなものは作ってないデス)に記載したかつての担任に。行き違いが重なってこの言葉を放たれる状況になり、それでも沈黙していた私は何発か殴られる結果となった。すると、殴られるのが嫌なクラスメイトはポロポロしゃべるわしゃべる。こんな面白い光景は、後にも先にもこれが最初で最後。のちに、担任&裏切り者たち(私は卑怯者ですが)にその当時の頑なな根性を笑い話にされることになるのだが、あの光景&言葉は忘れられない。多分、一生。

4163242007厭世フレーバー
三羽 省吾
文藝春秋 2005-08-03

by G-Tools

もしもお気に召しましたら人気blogランキングへ…
にほんブログ村 本ブログ←お気に入りブログ発見!

|

« ノミ、サーカスへゆく | トップページ | 悪意の手記 »

74 その他の本」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

ユエさんはじめまして。
TBさせていただきました。
『厭世フレーバー』を自分のことにひきつけて書いていますね。
この本を読んだ方々は、恐らく好きな章を持つのではないかと思います。
 僕が好きな章は、14歳のケイかなぁ。
 理屈ではない限りない怒りや悲しみがごちゃ混ぜになって何がなんだか分からないというケイ。そんなケイにシンパシーを感じてしまいます。

投稿: マサキ | 2005.10.11 18:04

マサキさん、コメント&TBありがとうございます!
1章1章違う視点で書かれている作品なので、注目どころはどうしても自分に置き換えてしまうのかもしれないです。
マサキさんはケイでしたか。興味深いです。
記事、じっくり読ませていただきますね。
今後も宜しくお願い致します。

投稿: ましろ(マサキさんへ) | 2005.10.11 21:41

ましろさん、こんにちは。
最近は哲学や洋書に興味があるようですね。
まだ、私は未開発の分野なので興味深く読んでいます。
厭世フレーバー、読んだのでTBさせてもらいました☆面白かったです!

投稿: sonatine | 2005.10.14 22:24

こんばんは。トラックバックさせてもらいました。
この本、私は17歳の章が一番好きでした。私の17歳には5万の価値もなかったと思うけど、いろんな意味で。
面白かったですね。次回作に期待、です。

投稿: ざれこ | 2005.10.14 22:30

sonatineさん、コメント&トラックバックありがとうございます!
興味深く読んでくださっているとは。とても嬉しいです。
実は最近、自分の好みがわからなくなってきていたりします。
海外作品アレルギーはなくなってきたものの、雑食化していまして…好きだったものって何だろう?という心境です。

投稿: ましろ(sonatineさんへ) | 2005.10.15 15:32

ざれこさん、コメント&トラックバックありがとうございます!
わお。17歳が好きでしたか。
一緒で何だかウキウキしてしまいました。
私も次回作、期待しております。

投稿: ましろ(ざれこさんへ) | 2005.10.15 15:36

17歳は秀逸ですね。父親の残したゴツいリングブーツを履き続けるのが、なんだかよかった。

投稿: すの | 2005.12.11 14:23

すのさん、コメント&TBありがとうございます。
17歳、ホント秀逸!いいですよね。
なんだかんだ言って、父親のことが好きだったのかも…なんて思ってみたり。
でも、単にブーツを気に入っていただけだったのかも…うーん。

投稿: ましろ(すのさんへ) | 2005.12.11 14:53

ましろさん、お久しぶりです。
この本、色んな事(中学生の気持ち、女子高生の性、アジアの出稼ぎ、バブルのころに戦争の頃)が出てきて、読んだ後普段の人とする会話やテレビを見ててふと思い出します。

私もカナは父親に淡い恋心(死語かしら?)を抱いていたのでは?って思ってました。

投稿: なな | 2006.01.15 13:58

ななさん、コメント&TBありがとうございます!
普段の会話の中に読んだ本のことが思い出されるのって、いいですね。
加えて、あれこれ語り合えたら素敵かも…なんて。
実際の私は浮かんだ言葉を呑み込んでばかりなんですけど。

投稿: ましろ(ななさんへ) | 2006.01.15 20:07

ましろさん☆こんにちは
わたしは新造さんの章が好きでした。
人生って自分の力だけではどうにもならないんだ余なぁってことですよね。
家族それぞれの思いが一つにまとまるラストはちょっと幸せな気持になりました。

投稿: Roko | 2006.10.09 14:18

Rokoさん、コンニチハ。
コメントありがとうございます!
新造さんですか。渋いところを…。
そうですね。自分の力だけじゃなく、いろいろなものに左右されながら、
乱されながら、成長してゆくものなのかもしれませんね。
ラストはわたしも幸せを感じました!

投稿: ましろ(Rokoさんへ) | 2006.10.09 16:50

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55029/6172501

この記事へのトラックバック一覧です: 厭世フレーバー:

» ◎◎「厭世フレーバー」 三羽省吾 文藝春秋 1680円 2005/8 [「本のことども」by聖月]
 期せずして傑作を読んでしまった。本書『厭世フレーバー』は、ユーモア風味溢れる家族小説の傑作である。  デビュー作であり第8回小説新潮長篇新人賞を受賞した◎『太陽がイッパイいっぱい』も、オカシミ&ユーモア溢れる青春小説として中々楽しかったのだが、いかんせん青春のフレーバー(風味)を表現せんがためのベタな描写が目立ち、そういう欠点をオブラートに包むというような著者の力量がまだ足りなかったのが、評価◎止まりという結果であった。  本書を読み始めての数ページでは、前作に引き続き、そういうタイプ... [続きを読む]

受信: 2005.10.02 11:23

» 厭世フレーバー [シエスタ〜夢の途中で〜]
   『厭世フレーバー』 [続きを読む]

受信: 2005.10.11 18:16

» 厭世フレーバー [寝ていられるのになぜ起きる?]
[続きを読む]

受信: 2005.10.14 22:13

» 「厭世フレーバー」三羽省吾 [本を読む女。改訂版]
厭世フレーバー発売元: 文藝春秋価格: ¥ 1,680発売日: 2005/08/03売上ランキング: 25,825posted with Socialtunes at 2005/10/14 (非公認)読者大賞blogの新刊本ベストに突如エントリーがあったこの本。 (本のことどもの聖月さん、いつもありがとうございます) 聞いたことない作家さんだし、なんだかマニアックだなあ、と正直思った。 そして図書館に行ったらむっちゃ無造作に置いてある。新刊なのに。 そして、いい出会いをさせてもらい... [続きを読む]

受信: 2005.10.14 22:32

» 「厭世フレーバー」三羽省吾 [図書館で本を借りよう!〜小説・物語〜]
「厭世フレーバー」三羽省吾(2005)☆☆☆☆★ ※[913]、国内、現代、小説、家族、父不在 本読み人仲間聖月さんのオススメということで図書館に予約、同じく本読み人仲間mamimixさんの気になる一冊と知ったところに、図書館から連絡。期待して読んだ。 まず、苦言。オビが全然ダメ。「俺がかわりに殺してやろうか−父親が失踪。全力疾走のはてに少年は血の味を知った−」これは決して嘘じゃない。しかしけど映画の予告編と同じ、作品の一部をつぎはぎしたもの。「家庭の崩壊と再生をポップに描いた快作..... [続きを読む]

受信: 2005.12.11 14:20

» 「厭世フレーバー」三羽省吾 [ナナメモ]
厭世フレーバー三羽 省吾 リストラされた父親が失踪した。残された家族5人の物語。この本も本が好きな方のブログにたくさん登場していて、なんとなく面白そうなにおいが漂って来ました。うん。面白い。恥ずかしながら漢字が苦手な私は「厭世」が「えんせい」と読むとは...... [続きを読む]

受信: 2006.01.15 13:58

« ノミ、サーカスへゆく | トップページ | 悪意の手記 »