« 薔薇の花の下 | トップページ | 予告された殺人の記録 »

2005.08.09

メリーゴーランド

20050807_106 地方公務員。36歳の遠野が任されたのは、市が建設した超赤字のテーマパーク「アテネ村」の経営を建て直すこと。地方都市の村興しと権力闘争に翻弄され、おかしくも哀しくもある奮闘を描いた、荻原浩・著『メリーゴーランド』(新潮社)。市役所の管理職は丸投げを決めこんでいるし、報告書と準備室の看板書きばかりに熱心な課長は頼りにならないし、アテネ村の運営会社であるペガサスリゾート開発には古い概念にとらわれた口うるさい理事たちばかり。そんな中、あれこれもがいてみせる遠野らの姿に好感がもてた。するりと物語に入っていける描き方にも、とても惹かれた。ユーモア小説という部類に入るのか。荻原氏の作品は初めてなので、もっと読まねば。

 私が一番気に入ってしまったのは、遠野が息子の作文を想像するところ。テーマは、お父さんの仕事。『うちのお父さんの仕事は、たのしいゆうえんちをつくることです。毎日の仕事は、がつんとはく力じゅうぶん』と言って、照れまくる。『うちのお父さんの仕事は、すごくいそがしくて、土よう日も日よう日も出かけます。ぼくとのやくそくもまもってくれません』と言って、家族に申し訳なく思う。親の背中を見せることは、子供への何よりの教育と言うが、背中ばかり見せられたら、子供だってたまらないだろうと思う。こういう親心は、なかなか子供には伝わってこないものだから、自分のことのようににんまりしてしまった。

 あれ?そういえば、私は父親の仕事が何なのか説明できないかもしれない。ふと、そんなことに気づく。職種は言える。どんな役職なのかも言える。言えるが、具体的に何をやっているのかは知らない。異動が多いせいもあるのだけれど、父親と仕事の話をほとんどしないせいもあるのだけれど。私が朝起きた時には、もう出かけた後のことが多く、夜はさっさと就寝してしまう。あぁ、私は作文が書けない。まあ、書く必要はないので困る必要はないのだが、私はあまりにも父親のことを知らないことに気づかされた。今日交わした言葉といえば、父「日経PC、2冊持っていかなかった?」私「1冊じゃなかったっけ?」父「バックナンバーが2冊ないんだよ」私「じゃ、探しとく」このくらいだ。

 それから、この本を読んだ多くの人が、公務員に対して怒り又は疑問を感じるのではないかと思う。この本に描かれているお役所の実態が、あまりに呆れてしまうものだから。それとも、本当にこんな許し難いことが行われているのか。ユーモアにしても、父親が公務員の私は少々複雑な気持ちになった。ニュースでの報道を聞く限り、呆れる実態があることは事実のようだが、そんな人はわずかであると信じたい。ごく一部の人のせいで誤った認識が広まってしまうのは、とても残念に思う。それは、どんな仕事にも言えることだけれど。父親をよく知る人から聞いた、“君のお父さんは、とても凄い人なんだよ”という言葉が、私をずっと支えてくれている。明日は、もう少し語り合ってみようかな。

4101230331メリーゴーランド (新潮文庫)
荻原 浩
新潮社 2006-11

by G-Tools

もしもお気に召しましたら人気blogランキングへ…
にほんブログ村 本ブログへ←クリック、再び切に願ってみる。

|

« 薔薇の花の下 | トップページ | 予告された殺人の記録 »

10 荻原浩の本」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。こちらに書かせていただくのは久しぶりです。
お父様のお話、すごくわたしのうちと似ているからうれしくなって。
もう亡くなって17年になりますが、わたしの父も公務員でした。

幼い頃、わたしは父と文通して文字を覚えたんです。
朝わたしが起きる前に出ていって、夜はもちろん寝た後に帰ってくる。
そんな父に、毎日手紙を書きました。
父がそれをどんな顔で読んだのかはわかりませんが……。

わたしも父を誇りに思っています。変わらず、尊敬する人です。
ましろさんとお父様が、ずっとずっと、いい関係を続けていけますように。

投稿: わさび | 2005.08.09 22:35

わさびさん、コメントありがとうございます。
お久しぶりです!とっても嬉しく読みました。
わさびさんのお父様も公務員でしたか。
お父様と文通なんて、とっても素敵ですね。
わさびさんからの手紙、きっとすごく嬉しかったのでは…と思います。

私の場合、10代の頃まではずっと父子家庭のような家族関係だったんです。あまりに姿を見ないもので。でも、一番そばにいて欲しかったときに、しっかり支えてくれた。やはり、父は偉大だと痛感しました。
親孝行せねばいけませんね。

投稿: ましろ(わさびさんへ) | 2005.08.09 23:12

私の父も実は公務員です…。役所づとめではないですけど、みていていろいろ大変そうです。
ちなみに私もこの本が初荻原さんでした!それ以来いろいろ読んでますけどどれもなかなか…。いいです!

投稿: chiekoa | 2005.08.10 15:09

chiekoaさん、コメント&トラックバックありがとうございます。
chiekoaさんのお父様も公務員でしたか。
私もこの本をきっかけに、荻原さんの作品をもっと読んでみようと思います!
本選びの参考に、またお邪魔させていただきますね。

投稿: ましろ(chiekoaさんへ) | 2005.08.10 17:02

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55029/5383545

この記事へのトラックバック一覧です: メリーゴーランド:

» メリーゴーランド [荻原浩] [+ ChiekoaLibrary +]
メリーゴーランド荻原 浩新潮社 2004-07-01 東京で働いていた会社を辞め、地方公務員として地元「駒谷」に帰ってきた遠野啓一、三十六歳。市役所で働いていた彼が出向させられたのは「駒谷アテネ村リニューアル推進室」。超赤字のこのテーマーパークを立て直すため奮闘する彼の前に立ちふさがるものは…。 公務員って、役所って…。ほんとにこんななんでしょうか!腹立たしい(笑)。ここにいるのが私だったら、かなりイライラしてプッツンするところですが、この主人公はそうはならないところがえらい。煮え切らない... [続きを読む]

受信: 2005.08.10 15:07

« 薔薇の花の下 | トップページ | 予告された殺人の記録 »