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2005.08.19

僕の双子の妹たち

20050815_157 日常生活の小さな出来事を丁寧に愛おしく描いた作品である、白石公子・著『僕の双子の妹たち』(集英社)。物語の流れはあまりに心地よく、全部を読んでしまうのが惜しくなるくらいであった。あらすじは、突然の事故で両親を亡くした兄妹が、その事実をゆっくりと心を漂わせながら受け止めてゆく…というモノ。知らず知らずのうちに、避けてきた両親に関する話題や思い出。それぞれに抱える悩み、問題、戸惑い。そういったものが、兄の視点でずっと描かれてゆく。その目がとても温かいから、穏やかだから、するりと読み手を物語の中に誘ってくれる。絶妙な各章のタイトル。それぞれ10ページ程の長さになっており、読み手を飽きさせない構成になっている。

 “僕の双子の妹たち”兄の直毅は何度もこのフレーズをつぶやく。いとおしさと慈しみ、あきれるほどの独占欲と兄バカをこめて。ときには、兄であることの責任感と疎ましさを振り払うために。双子の妹たち、実のりと穂のかは、兄を試すかのように次々と問題を持ち込んでくる。そのたびに、直毅は自分がいかに保守的で世間を重んじるちっちゃいヤツであるかを思い知る。彼のそういうみみっちさが、とても好感持てるのだ。妹たちも、あれこれ言いながらも兄を頼っている。両親のいない暮らしの中で、兄妹がそろって食卓を囲む光景は、微笑ましい。

 この物語で、何ともいい佇まいなのは、兄妹の祖父。いわゆる二世帯住宅に住んでいるため、生活は完全に別れているのだが、何かと面倒見がいい。さりげない関わり方が、とても素敵なのだ。自分のことは全て一人でこなし、自由気儘な隠居生活を楽しみ、かまわれることを嫌がる。けれど、両親の死により泣いてばかりいてろくな食事をしなくなってしまった兄妹を心配し、夕飯だけ作ってくれるようになる。自分から言い出せずに、こっそり機会をうかがっていた祖父と、兄妹がそれぞれを思いやり必死で立ち直ろうしている姿にじーんとくる。

 それから、登場人物たち(兄妹、父親の愛人)は、ある意味時間が止まっている。本の中で両親の死後1年ちょっとが過ぎたはずなのに、それぞれが自分の時間を止め、息をひそめ、時が目の前を通り過ぎるのをじっと見ているだけなのだ。そのことに気づいた先から、物語がゆっくり少しずつ動いてゆく。うろたえている自分こそが本当の自分であること。おろおろすることに真実があること。今を生きることに必死であったこと。彼らの生きる日常は、小さな出来事に動かされて変化してゆく。それはとても些細だけれど、確実に前を進む。それぞれのスピードで。

408774700X僕の双子の妹たち
白石 公子
集英社 2004-06

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コメント

こんにちは。
柊も『僕の双子の妹たち』大好きです~。
柊には双子の子供達がいるため、タイトルに惹かれて購入しちゃったのですが、読んでみてこんなに何度も読み返したくなる本になるとは思ってもみませんでした☆
双子の妹たちの描写、ちゃんと一人一人が描かれているところにとても好感持ちました。

投稿: | 2005.08.19 22:25

柊さん、コメントありがとうございます!
双子の妹たちの描写、とてもよかったですよね。それぞれの個性があって、なおかつ“似ているのは当然じゃない。だって、双子なんだから”みたいなことを言うシーンもあって。
もっと作品を読んでみたいと思える作家さんに出会えて嬉しいです。柊さんの読まれた白石公子さんのエッセイに、興味津々デス。

投稿: ましろ(柊さんへ) | 2005.08.20 07:20

ましろさん、こんばんは。
ましろさんの「最近のお気に入り本」で見て読みたい!って思ったのです。すごくよかったです。
私にとってましろさんの「最近のお気に入り本」は注目本なのです。

投稿: ましろさんへ | 2005.10.25 22:50

ななさん、コメント&TBありがとうございます!
「最近のお気に入り本」、見てくださっていたのですね。とっても嬉しいです。
日々ブログを続ける励みになります。あぁ、本当に本当にウレシイデスー♪

投稿: ましろ(ななさんへ) | 2005.10.26 13:34

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受信: 2005.10.25 22:58

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