« 予告された殺人の記録 | トップページ | すみれの花の砂糖づけ »

2005.08.12

毒舌精神科医の愛の言葉

20050807_126 “あなたはとっととくたばるべきです”そんなキツイ言葉を放ちながらも、人間の愚かさや醜さ、いやらしさに皮肉と冷笑を込めて、そっと教えてくれる。あなたも私も、たいしたことない奴だと。オズワルド・T・プラット&スコット・ディッカーズ著『毒舌精神科医の愛の言葉』(東京書籍)は、全編がパロディ。もちろん、精神科医による現実的なアドバイスではない。けれど、人間誰もが心の中で密かに思っていることや考えていることを、何も包まずにそのまま見せてくれる。現実の厳しさを伝える言葉やひねくれた本音は、徐々に慣れてくると優しさに感じられるくらいの真実である。ただし、強い意志と気持ちで向き合えるだけの精神力があるときに読まないと、相当へこんでしまう危険がある。

 この本、“僕はひどい精神科医です。僕を好いてくれる人は誰もいません。僕の言うことに耳を傾ける人もいません”そんな愚痴から始まる。そして、患者として彼を頼る者に対しての嫌悪感をあらわにする。彼は、いつも患者にありのままを率直に告げる。真実というのは、人を傷つけるものであることを気づかせる。けれど、こんなことを言う。“この本は人のために役立つようなものではありません。なにしろ僕の場合、役に立たないことばかりやってきましたから”と。読み終えた私は思う。いやいや、そんなことはないですよ。役立たないことこそ、心を豊かにし、新しい気づきがあるかもしれませんから、と。

 本の構成は、ダメな自分を自覚することからスタート。続いて、役に立たない友について。愚かな他人について。愛という名の悪夢について。わずらわしい子どもについて。やっかいなペット。みじめな仕事。信仰。人生について語られる。特に痛くもあり、面白かったのが、ペットについての部分。“もしペットとの間に特別な絆がある、と思っているなら、それはあなたの幻想です。あなたのペットは、食料と水に困らず暮らしていければ、明日、あなたが電車に轢かれようが何しようが、動揺したりしないのです”というもの。確かに真実だと思う。ペットに対する思いは、私の自己満足であり、一方的な思いに過ぎないのだから。

 一部しか書けなかったが、パロディと言えども、痛い部分を突いてくる言葉がたくさんある。例えば“あなたの知人はあなたが死んでも、すぐに立ち直ります”とか。こういう言葉にいちいち傷ついていたら、生きてはゆけない。キツイ言葉の数々は、裏を返せば優しくもあり正しくもある。癒し系の絵本によくあるような“きみはたったひとりしかいない大切な宝物だよ”なんていう言葉が、嘘くさい戯言のように感じる方には、スカッとする本だと思う。私を信じて何でも話して。私たち親友でしょう?私とあなたの仲じゃないの。私の愛がわからないの?…世の中は、惑わす言葉に溢れている。

4487796806毒舌精神科医の愛の言葉
Oswald T. Pratt Scott Dikkers 深井 照一
東京書籍 2001-06

by G-Tools

もしもお気に召しましたら人気blogランキングへ…
にほんブログ村 本ブログへ←クリック、お願い致します!

|

« 予告された殺人の記録 | トップページ | すみれの花の砂糖づけ »

58 海外作家の本(アメリカ)」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

こんばんは☆
毒舌精神カ医ですか・・・。僕はリアルで毒舌精神カ医から暴言を受けた経験がありますよ(笑)
まあ、いま思い出してもひどい奴でしたね。
そういう過去があるから、僕はこの本を手に取っても、最後まで読めないと思います。少なくとも、スカッとはしないでしょう(笑)
リアルな世界では、「惑わす言葉」のほうが大切なんでしょうね。

投稿: デミアン | 2005.08.12 21:39

デミアンさん、コメントありがとうございます!
いろんな精神科医がいますよね。私もリアルで暴言をもらっちゃいましたよ。即、病院変えましたが。
実は、この本は、最後まで読めなかった挫折本のうちの1冊なんです。4年前読んだときは、毒舌がズキズキ心に刺さってへこみまくりでした。が、今日、本棚の整理をしていてパラパラ読んだら、大丈夫だったんです。私の中で、何かが変化したのかもしれません。

投稿: ましろ(デミアンさんへ) | 2005.08.12 22:13

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55029/5437701

この記事へのトラックバック一覧です: 毒舌精神科医の愛の言葉:

« 予告された殺人の記録 | トップページ | すみれの花の砂糖づけ »