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2005.08.01

お縫い子テルミー

20050729_020 “一針入魂”がポリシー。流しの仕立て屋・テルミーの切なくも前向きな生き方を描いた、栗田有起著『お縫い子テルミー』(集英社)。15になったばかりで生まれ育った島を出て、東京でお縫子をするテルミー(本名・鈴木照美)。“お縫子”であるから、ミシンは使わずに一針一針手縫いである。依頼があると、服作りのために依頼主の家に居候する。出来る限り依頼主の生活を邪魔しないよう、気遣いをしている。けれど若さゆえ、性的関係を持つことが少なくない。全ては、依頼主と良くなじむ服を作るため。最優先するべきことは、仕立ての技術を磨くこと。経験を積むこと。テルミーは、とても潔い。

 “生きていくのに必要なのは知恵であって知識ではない”というテルミーの祖母の言葉。物語を読み進めていると、その言葉の思うところが大きくなってゆく。例えば、未来の行く末についてテルミーが悩む場面。好きなように生きていくには、どうしたらよいのだろう。つらくても死ぬまで生きなければならないのは、なぜだろう…と頭を抱えていても、テルミーは前に進むことを決して止めない。自分の足が向く方へ、どんどんゆく。自らの力で、気づいてゆく。生活の中で身につけてきた、彼女なりのやり方。生き方。あぁ、何て逞しいのだろう。あぁ、何て美しいのだろう。私は、テルミーに強く強く惹かれてゆく。

 表題作の「お縫子テルミー」の他に、「ABARE・DAICO」が収録されている。こちらは、“なかなかやるやつ”とか“すげえ”と、周囲から思われてみたいという目標を持つ誠二が、夏休みに奮闘する話。ハンサムで、背が高く、人生経験豊富な人のように話す友人と対等になるべく。1つ1つの目標は、みみっちくてしょうもないことであるのだけれど、彼の地道な努力と向上心にはひれ伏したくなるくらいだ。誰かに頼ることなく、自分の力で出来る限りのことをするという姿勢は、表題作の「お縫子テルミー」にも通じるところがあるように感じた。私は、誠二がとっても好き。

 誠二の目標を書いてみる。「今年中に、知っている人全員の名前を覚える」「牛乳を毎日、コップ二杯必ず飲む」「国語辞典を全部読む」である。誠二は、小学5年生。これらの目標、何かいい。すごくいい。とってもいい。誠二はよく行くスーパー、コンビニ、本屋、レンタル屋の店員のシフトと名前を覚えている。そして、小学校の先生と用務員さんをクリアし、全校生徒の名前(700人)に取りかかろうとしているのだ。牛乳は、背が低いのを気にして(私もチビさ)。国語辞典は、多くの用語を知るためである(大人への一歩)。今は、夏休みの時期であるから、私も何か取り組もうかしら。

4087460509お縫い子テルミー (集英社文庫)
栗田 有起
集英社 2006-06

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コメント

テルミー…しびれちゃうほどかっこいいですよね。
ほんと、見習わねばですね!

投稿: chiekoa | 2005.08.02 17:35

chiekoaさん、コメント&トラックバックありがとうございます!
ホントしびれちゃいますね。テルミーとってもいいです。
読み返してみたら、“誠二が好き”とか書いちゃってました…恥ずかし。

投稿: ましろ(chiekoaさんへ) | 2005.08.02 22:37

ましろさん、こんばんは!
こちらからもトラックバックさせていただきます。
テルミーのように潔く力強く生きたいっ!と強く思います。今からでも決して遅くないと。
小松くんいいですよねぇ。素敵です♪

投稿: リサ | 2005.08.02 22:58

リサさん、コメント&トラックバックありがとうございます!
潔くて力強い生き方、できるといいですよね。ますます惚れ惚れしてしまいます。
小松くん、いや誠二くん、いやいや誠二…照れますね。

投稿: ましろ(リサさんへ) | 2005.08.02 23:47

こんにちは!
この本、最初はテルミーの方にとにかくビリビリとしびれちゃって、ちょっと誠二くんのお話の方がややかすんでしまう感じだったのですが、でも今になってじわじわときてます。誠二くん、いいですよねぇ。なんともいえない微妙な努力が涙ぐましいです。
こちらからもTBさせてください♪

投稿: ゆら | 2005.08.03 03:27

ゆらさん、コメント&トラックバックありがとうございます!
私も、日に日にじわじわきている感じです。ゆらさんのレビューを読んで、さらにじんわりじわじわきましたよ。熱がこめられている雰囲気がたまりませんでした。

投稿: ましろ(ゆらさんへ) | 2005.08.03 17:35

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