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2005.08.08

薔薇の花の下

20050807_022 “わたしにできることは数えるほどしかないけれど、だからこそわたしは、それをとても上手にできる。たとえば誰かを愛することを…”こんなふうに言いきれたら、スカッとするのではないだろうか。そう感じてから2年以上が経ったのに、私には上手にできることが見つからないままだ。不器用にしか生きられないことを恥じるばかりで、心はあまりにも傷つきやすい。先の言葉を述べている、狗飼恭子・著『薔薇の花の下』(幻冬舎文庫)の主人公と同じ歳になっていたことに気づき、読み返してみたのだが、やっぱり私は成長していないなぁと思う。そんな些細なことにいちいちウジウジしているのが、いけないのだとも思うのに。

 この小説、ドキリとさせられる言葉が多く、付箋をいくつも貼ってある。恋愛小説家の今日子の日常を綴ったものなのだが、切実に悩んだりうろたえたり涙したりするのが、人間らしくて好きだ。新しい小説を書こう。今日こそ書こう。明日こそ書こう…そう思いながら、結局物語の最後まで書けないままのところもいい。恋人が自分以外の誰かのものになるのがとても嫌なので、死んでくれたらいい、と思うところも。私を好きでたまらないうちに死んでしまえ、と思うところも共感してしまう。それに加えて私の場合は、いっそ私が死んでしまおうか、というのがあるが。こんなふうに書くと、コワイ女だと思われるのだろうなぁ。自分でもコワイし。でも、まあいい。

 話を物語に戻そう。主人公は、たびたび現実とは。リアリティとは…と悩む。ままならない現実に。ただ積もっていくストレスに。押し潰されない程度の重荷に。幸福の定義に。夢の所在に。自分の所在に。現実から逃げてしまおうか。本当に、世界に、恋愛小説は必要なのか。本当に恋愛小説家は必要なのか、と。これらは、生きていたら誰もが抱える問題と重なる。それらは、自分で自分なりの納得いく答えを見つけるしかない。もしくは、大切な誰かを通して知るしかない。多くを望めばきりがなく、このくらいでいいやと諦めるのもどうかと思う。人それぞれの物差しは異なるから、正解はない。そんな曖昧なもの。曖昧だからこそ、悩むもの。そういうことを細やかに描いている。

 物語は、ぐるっと一周して始まりに戻る形をしている。あぁ、私たちはきっと、こういう繰り返しの中で暮らしているのだなと思う。何周もしているのだから、真面目なだけじゃなくて、ときにはずるをしたっていいのかもしれない。立ち止まるときがあってもいいのかもしれない。もっともっと自分に正直であってもいいのかもしれない。そんなことを思わせてくれる。いくら主人公と同じ歳だからといって、同じように思えなくてもいい。同じように言いきれなくてもいい。そんなわかりきっていることを、やっと気づく。私は私でいいのだと。そのままの私を、もう少し誇ってもいいのだと。

4344403983薔薇の花の下 (幻冬舎文庫)
狗飼 恭子
幻冬舎 2003-08

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コメント

こんにちは。トラックバックありがとうございます。狗飼さんの作品はいろいろなところにどきりとする言葉がありますよね。
愛することが得意って素敵。
難しい、と思うけどただまっすぐに愛せばいい。だけどそれが難しい。

投稿: sonatine | 2005.08.12 17:25

sonatineさん、コメント&トラックバックありがとうございます。
愛することが得意なのは、とっても素敵だと私も思います。
自分のことをよく知らないから、“これ!”っていうものがわからないのかなぁ…なんて都合のいい解釈をしつつ。

投稿: ましろ(sonatineさんへ) | 2005.08.12 18:30

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