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2005.08.05

ハミザベス

20050702_001 自立や将来に対する気づきをテーマに描かれた、栗田有起・著『ハミザベス』(集英社)。第26回すばる文学賞受賞作の「ハミザベス」と「豆姉妹」の2編を収録している。どちらの作品も、じんわりと温かなものが広がるような味わいを残す。読み手をするりと物語の世界に引きずり込むような、リズムが感じられる文章もいい。登場人物たちの心の動きも魅力的で、先が気になる展開がよかった。ただ、短い作品のせいなのか、あまりに終わり方が唐突な気がしてしまった。もっともっと読みたいのになぁ…そんな気持ちがうずうずとする。読み手をそういう気分にさせている時点で、著者の意図にどっぷりはまっているのかもしれない。

 「ハミザベス」は、更年期障害に悩む母の梅子と暮らす、まちるの物語。はたちになる直前、とっくに死んだと聞かされていた父の代理人から、遺産を相続して欲しいという連絡が入る。代理人の女性の強い勧めで、もらうつもりはなかったものの、梅子には現金が、まちるにはマンションの一室が譲られた。なぜ父が、2人に財産を残したのかは謎のまま。まちるは、初めてのひとり暮らしをはじめ、かたわらには、代理人の女性から譲られたハムスターの“ハミザベス”が一匹。やがて、自分の出世にまつわる意外な事実や、父の仕事について知ることになり、母との相互依存的な生活から抜け出し、自分の人生を歩みだす。

 母と娘。2人きりの家族。これらの言葉だけで、思うところはたくさんある。ただでさえ、家族の中で親密さ、密接さが濃い関係であるというのに、2人きりとは…。あるときには依存的に。またあるときは過干渉的に。母と娘というのは、近づき過ぎる関係になりがちだ。中には不仲な場合もあるだろうが、嫌だ嫌だと言いつつも、結局一緒にいるではないですか。お互いのことを、ちゃんと理解しているではないですか。そういう私もいまだに親離れできていないものだから、一緒にでかけては、“やっぱり持つべきものは息子よりも娘だわ”なんて言葉を聞く。自らの力で、一歩を踏み出すことは容易なことではない。身を以て知るとは、こういうことかと思う。

 さて、もうひとつの「豆姉妹」。こちらは、7つも年が離れているのに双子のようにそっくりで、地味に堅実に生きてきた姉妹の話。堅実でしっかりものの姉はいきなり看護婦を辞めてSMの女王になった。妹は、なぜか髪をアフロにしてみた。そんな理由なき行動から、将来への新たな気づきを見つける…というもの。個性に対して、極端なほどにどうでもいいと考えていた登場人物がとった行動としては、あまりにも現実離れしているのだが、なかなか面白く読んだ。体を寄せ合い、くっつき合って暮らしていた(ひとつのさやにおさまる豆のような)姉妹が、自分の進むべき道をゆく。こんなにも道は、幾重にも別れていたのですね。

4087478408ハミザベス (集英社文庫)
栗田 有起
集英社 2005-07-20

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コメント

個人的には「豆姉妹」のほうが、いいな。
畳一畳敷は八畳じゃないとはいえ、ヤリスギじゃないですか?(苦笑

投稿: すの | 2005.08.13 12:08

すのさん、コメント&トラックバックありがとうございます。
畳一畳敷については、同感です。小説だから、まぁよいか…と(笑)
「豆姉妹」は、長編で読みたかったなぁと少々物足りなさを感じました。面白かっただけに。

投稿: ましろ(すのさんへ) | 2005.08.13 14:49

ましろさん、こんにちは! Sachiです。

『ハミザベス』、おもしろくてすっかり気に入ってしまいました。

わたしも『豆姉妹』の方が好きですケド。(笑)

こちらの記事にTBさせてくださいねー。(^^)

投稿: Sachi | 2006.05.19 18:29

Sachiさん、コメント&TBありがとうございます!
おっ、やっぱり「豆姉妹」のほうですか。
おもしろかったですよね。
栗田有起さんの作品、かなりはまってますデス。

投稿: ましろ(Sachiさんへ) | 2006.05.20 11:19

はじめまして。調子にのって遊びに来ちゃいました。
同時収録の「豆姉妹」もおもしろかったです。
とんでもヘアにした妹とか滝にうたれるおじさんとか。
でもハミザベスの畳一畳分が強烈で忘れられません^^
またトラバとコメントさせていただきま~す。

投稿: ぶきおん | 2007.10.05 20:56

ぶきおんさん、コチラにもコメントありがとうございます!
そうですね。「豆姉妹」。ぎょっとなりつつ、楽しんだのを覚えています。
いいですよねぇ~栗田さんの作品。
次はどんな物語になるのか、とても気になるところです。
ぜひぜひまたトラバ&コメントくださいませ☆

投稿: ましろ(ぶきおんさんへ) | 2007.10.06 05:52

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