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2005.08.07

オリーヴの小道で

20070528_029 ジォルジョ・モランディという画家に捧げられた穏やかで温かな物語、今江祥智・文、宇野亜喜良・画『オリーヴの小道で』(BL出版)。猫のジュゼッペと暮らすマリアばあちゃんは、モランディ美術館で働いている。ほんのりと明るくて、しーんと静かな部屋には、すわりのいい小椅子は1つ。壁には、ジォルジョ・モランディさんの10枚ばかりの絵がかかっている。ここが、マリアばあちゃんの部屋である。ばあちゃんは、そこで静物画たちが密やかに話すのを聞き、ジュゼッペへのみやげ話にしようといつも思っている。物語は、終始静かに流れ、心地よい世界に導いてくれる。

 ジォルジョ・モランディという画家の作品は、見たことがないのだが、マリアばあちゃんの言葉から気持ちがすうっと入り込んでしまうような魅力のあるものだと想像する。ばあちゃんは、「小道」というタイトルの絵に心を持っていかれてしまうから。しぶい色合いの壁が広い家。白い窓と黒い窓。勝手にオリーヴだろうと決めてしまった木。丁度良い具合に曇っている空。ゆっくりと空にとけてしまいそうに思える、明るすぎず、暗すぎず、心が落ち着く、そんな風景。ばあちゃんは、きっとあの家の人たちは穏やかだろうと思い、“話が合いそうだ”なんて思っている。

 美術館という場所が、私はとても好きだ。ひんやりした建物といい、静けさといい、心地よいエアコンディションといい、時間を忘れて芸術に浸れる場所としては最高だと思う。そこで対面する芸術作品に、自分の心がびびっとくる瞬間というものがある。たった1つでもいい。そうやって出会ったときめく作品と、思う存分時間をかけて対話すること。それが、私の楽しみの1つである。そして、おみやげに、ささやかながらポストカードを買って、ときどき出会ったときの感動を思い出す。小さな幸福感に包まれて、私はほんの数時間甘い甘い夢を見る。

 私のそんな感覚と、この物語のマリアばあちゃんは、重なる部分がとても多い。あぁ、でも、ばあちゃんほど私は心が豊かではないかもしれない。だって、ばあちゃんはずっとずっと長い年月、美しいもの、自分の好きなもの、びびっとときめくもの、そういうものに囲まれているのだから。ポストカードじゃなくて、本物の正真正銘芸術作品に、語りかけ、対話をし、心を許しあっているのだろうから。芸術作品と、そんな清く強い結びつきを持てることが、私はとても羨ましい。柔らかく微笑んでいるばあちゃんを思い浮かべながら、私は静かに本を閉じた。

4776400898オリーヴの小道で
今江 祥智
BL出版 2005-07

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