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2005.07.25

永遠の出口

20050721_006 小学校3年生から高校卒業までの一人の少女の物語と、今いる到達点を描いたエピローグからなる、森絵都・著『永遠の出口』(集英社)。さっぱり爽快な後味の本と出会ったのは、久しぶりだ。何てまっすぐなのだろう。何て潔いのだろう。“私は元気だ”とためらいなく言えることの凄さ。その一言を、私は胸をはって言えるだろうか。そんなことを考えていたら、私の中にあったはずの暗い影はすっと淡くなっていた。生きれば生きるほど人生は込み入っていくし、苦しいことも辛いことも盛り沢山だけれど、それでもまだ何とかなる。今は立ち止まっていても、少しずつ進める。そう思っていた。

 主人公の少女は、少しずつ確実にその世界を広げてゆく。同じクラスの仲良しグループの動向に一喜一憂していたかと思えば、厳しい校則と友人の言動に戸惑ったり、少し横道にそれてみたり、宙ぶらりんの日々を送ってみたり…それは、まるで自分の物語みたいによく理解できるものだった。もちろん、全てが全て、主人公と一緒の人生のわけがない。感じ方も考え方も違う。経験したことだって違う。それなのに、知っている気持ちなのだ。もう少女の物語の年齢を超えてしまっている人にとっても、今まさに同じ年頃の少女たちにとっても、きっとこの物語は愛おしいものなのではないだろうか。

 私の少女時代を振り返ると、やはり主人公のように未熟さと恥ずかしさを感じる。学校という社会の中に上手く折り合いをつけられずに、悩んでばかりいたっけ。ひたすら努力いつでも努力という生真面目さが、次第に自分自身をがんじがらめにしていることに、私は気がつくのがあまりに遅過ぎた。当時の私の目には、友人たちの行動言動が全ていい加減に映っていた。今思えば、友人たちの方がずっと利口に生きていたのだと思えるのに。私は自分しか見えていなかったのだろう。適度に力を抜くこと。柔軟に生きること。そういうことが今も難しいということは、今もまだまだ未熟だということなのだろう。

 どんな未来もありえたはずの自分の人生。あっちへもこっちへも行けたはずの私の人生。そんな中で、徐々に探りあてたそれぞれの道のどこかに今、辿り着いている。歳を重ねるたびに少しずつ図太くなって、躓いても笑って、“これが、今の私の到達地点だ”とさらっと言える日が来るといい。素直にそう思う。未来はまだまだ続いてゆく。子供の頃に思い描いていた未来の自分じゃなくても、どこか何となく「大人」になりきれていない自分を感じても、寄り道をしながらも前に進めたらいい。自分なりのペースで。決して、急ぐ必要はないのだから。

4087460118永遠の出口 (集英社文庫(日本))
森 絵都
集英社 2006-02-17

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コメント

こんにちは。トラックバックさせてもらいました。
この本、私はぐれたことないし、家族構成も違うけど、それでも自分のことみたいでした。やっぱりそう感じる人多いんだなあ、だから魅力なんだなあ、とこちらを読んで思いました。

投稿: ざれこ | 2005.08.02 08:59

ざれこさん、こんにちは。
コメント&トラックバックありがとうございます!
多くの方が、“自分のことみたい”と思うみたいですね。特に女性は。なぜなのでしょう。森マジック(?)でしょうか。男性だと、あそこがよくわからなかったな…っていう部分があるみたいです。

投稿: ましろ(ざれこさんへ) | 2005.08.02 13:15

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» 永遠の出口 [読書&映画メモ]
永遠の出口 森 絵都 ★★★★★★★★☆☆  8/10   小学生から高校生の紀子のエピソード。非常に共感が持てる話があるな。 読みながら大笑いしたり、泣きそうになったりと、かなり面白かった。 多くの人がそれあったなと思うエピソードがあるのでは。心情が凄くリアル。 中学時代の部活の話とか、高校の時のバイトの高揚感、未成年ならではの飲み会の妙な盛り上がり、チョット大昔を思い出した(^^♪ 参考1... [続きを読む]

受信: 2005.07.31 09:31

» 「永遠の出口」森絵都 [本を読む女。改訂版]
永遠の出口posted with 簡単リンクくん at 2005. 7. 6森 絵都集英社 (2003.3)通常24時間以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る 児童文学作家の森絵都さんの初のオトナむけ小説みたいです。 昨年の本屋大賞では確か4位だったかな?と記憶してます。 うむ、やはり本屋大賞は外れがないですねえ。いやあ、よかった。 多分私の世代よりもうちょっと上の世代の女性が、少女のころ、 小学校の頃、中学、高校、そんなころを回想している小説。 各章ごとにだん... [続きを読む]

受信: 2005.08.02 08:51

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