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2005.07.06

下妻物語・完

20050706_014 茨城県の下妻に引っ越してきたロリータ少女・桃子と、絶滅寸前のヤンキー少女・イチゴが出会い、2人が無二の親友になるまでの仁義(この言葉は結構好きである)と友情と笑いに満ちた物語である、嶽本野ばら・著『下妻物語』(小学館文庫)。映画化されたゆえ、多くの人が知ることになったこの本のことが、野ばらちゃんファンの乙女を名乗る私は心から好きだと言えなかった。けれど、新刊が出れば気になる訳で、Webでも読むことができた「きらら」掲載時から注目していた訳で…続編にして完結編である、『下妻物語・完』(小学館)を読んでみることにした。今回は、少々ミステリー仕立てになっている。

 ヤンキー少女・イチゴの純粋さや、バカ正直さもよいのだけれど、性格が生意気にねじ曲がり、イチゴ曰く根性が腐っているロリータ少女・桃子がいい。世の中を、人をも馬鹿にして皮肉る姿勢が、妙に心地よく、独自の強い信念を感じさせる。“女のコは意地が悪ければ悪い程、素敵である”という持論を持ち、ロココの精神を貫く生き方。人生の苦しさを軽んじて、刹那の快楽に溺れること。可愛いと酷い、美しさと醜さ、気品と野蛮、荘厳と軽薄、情熱と怠惰、純真と狡猾、潔さと執念…それらの相反するものを破綻なく同居させられること。乙女としたら、憧れを抱かずにはいられない。憧れまでいかなくても、こういう孤高な人を、私は素敵だと思う。

 多くの人が、相反するものに板挟みになり、どちらかを選択するかを決めざるをえない状況にあるというのに、桃子はそういうものには全く囚われない。桃子のいる出鱈目な不思議の国には、矛盾がなく、気紛れな自分自身の心が唯一のルール。道徳や倫理の圏外に暮らしている。そんな生き方が通用するのは、やはり物語の中だけなのだろう。いや、物語の中でも、充分に変わり者扱いで、呆れられている。けれど、そんな桃子を温かく見守り、全てを肯定してくれている存在がいるのだ。それは、祖母。“あんたの器は大きくないかもしれないけれど綺麗だ”など、名言を残している。こういう人が近くにいたら、どんなに心強いだろう。

 そして、他にもいい言葉を残している人物がいる。イチゴ(私のタイプじゃないわと言ってる桃子も)が惚れ込んでしまう元ヤンの警備員の男性である。“なれると信じる自分と、なれると信じてくれるダチがいれば、才能とか運とか関係ねーんだよ”そう、今後の選択に迷っている桃子に言うのだ。その前後は、あまりにも脳味噌が詰まっていない口ぶりだったり、キザだったりするのだが、実に救われることを言う。あぁ、先ずは自分で自分を信じることが大切だったのねと、頷いてしまう私。すぐに自分を卑下してしまう自分自身を省みるのだった。なあなあ自分よ、どんな本を読んでも、いつも省みてる割には進歩がないよな。

4093861536下妻物語・完―ヤンキーちゃんとロリータちゃんと殺人事件
嶽本 野ばら
小学館 2005-07

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33 嶽本野ばらの本」カテゴリの記事

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コメント

こんにちは。
なんと!『下妻物語』続刊が出たのですね。
すっかりチェックを怠っていました。
なにやら今度はミステリー仕立てとか。
また桃子といちごの掛け合いが読めるかと思うとうずうずです。
早く読みたい!でもちょっと最近本買いすぎで自粛中…大変辛い状況にあります。図書館にリクエストになりそうです。

投稿: リサ | 2005.07.07 14:54

リサさん、コメントありがとうございます。
『下妻物語』、お好きだったのですね。
桃子とイチゴの掛け合い、とってもテンポよく楽しめました。
私もリサさんと同じく、本の買いすぎで「買えないよなー。どうしようかなぁ…」という状況だったのですが、思い切ってしまいました。
本来なら自粛しなければならないところを。あぁ、自分の欲望に甘い私です。

投稿: ましろ(リサさんへ) | 2005.07.07 18:33

はじめまして。minoriともうします。
私もこの本よみましたよー。
よかったですよね。
自分がしっかり確立している桃子が
私もちょっぴり羨ましくなりました。
途中は笑えたけどラストはホロリと
しましたよー。

というわけでTBおくらせて頂きました。
今後ともどうぞよろしくです。

投稿: minori | 2005.07.10 20:50

minoriさん、コメント&トラックバックありがとうございます。
うんうん、よかったです。“ラストはホロリ”ときましたねー。
野ばらちゃん、やっぱり好き好き大好きという気分になっております。
8割くらいミーハー的になってしまっているかもしれません。
こちらこそ、今後も宜しくお願い致します!

投稿: ましろ(minoriさんへ) | 2005.07.11 13:35

イチゴの惚れた兄さんの言葉に
今の自分は、ちょっと救われる気持ち。

信じてくれる友達&家族の存在って
そこらのデーターとかよりも
最強だなーーーと思います!!

猫ちゃんの画像、毎日かわいーですねっ。

投稿: ito | 2005.08.13 05:22

itoさん、コメントありがとうございます。
野ばらちゃん作品の中で、「下妻物語」だけはどうも好きになれずいたのですが、
ほろりとくるような言葉に出会えると、気持ちが揺れちゃいますね。
誘惑に弱い自分を感じます。

猫、可愛いでしょ(笑)相当な親バカ入っております!

投稿: ましろ(itoさんへ) | 2005.08.13 14:40

恋物語まで展開されるとは思わずびっくりました!わたしも桃子にだまされました…(笑)

投稿: chiekoa | 2005.08.23 11:05

chiekoaさん、コメント&トラックバックありがとうございます。
ミステリーに、恋に、ほろり…やられちゃった感じです。
私もびっくりしちゃいました!

投稿: ましろ(chiekoaさんへ) | 2005.08.23 21:00

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