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2005.07.03

まるごと好きです

20050630_058 もう15年くらいだろうか。内容は忘れてしまったのだけれど、タイトルだけは鮮明に覚えていた本がある。工藤直子・著『まるごと好きです』(ちくま文庫)である。出会った当時、私は小学校の中学年だった。厳しい指導で知られていた某個人塾へ、ほんの数ヶ月間だけ通っていた頃。あまりに勉強し過ぎだと、塾のT先生が私にピンク色の1冊の本(文庫化される前の単行本)を差し出した。それがこの本だった。数日前、都内の本屋で偶然(この本と)再会を果たし、当時のことをいろいろ思い出した。T先生は口調が強かったが、その塾で最年少だった私には何かと優しかった。居眠りしてしまい、はっと起きると、目の前にはT先生がいて、“あんまり可愛い寝顔だったからねぇ。見とれてしまったよ”なんて言った。ちょっと恥ずかしくも嬉しかったっけ…

 この本、<ちくま少年図書館>のシリーズだったようで、どうやら10代向けの本だったらしい。読みやすい文章で最初から最後まで書かれているが、内容は大人向けではないかと思わせるほどに濃いと感じた。考えさせられること満載で、出会うべくして出会った本だったのだと強く深く思ったほどである。具体的な内容は、友人作りや友人関係のコツについて、著者やその友人たちの中学校・高校時代の様々な出来事を振り返ってみる、という内容。大人となった今だから、子供を持つようになった今だから思えること、気づくこと、笑えることなどが、ゆったり朗らかに語られている。

 中でも、印象的な言葉は、“とりあえず、まるごと好きになる”というもの。多種多様な友人関係を築いている著者の中学時代からのポリシーである。会ったとき、相手の好きな部分を先に探し出す、というもの。好きなところを見つけて「うん!」と、その人をまるごと好きになる。嫌いなところはあとから見つければよろしい。嫌いなところもひっくるめて好なこと、それが“まるごと好き”ということ。その上で、好きなところにだけ拍手をすればいい。そんなふうに著者は言う。それに、この言葉って、もの凄く深い肯定の意味なのではないだろうか。貴方という存在を、私という存在を認めてくれるような。何て素敵な言葉だろう。

 その他にも、印象深く素敵だなと感じる言葉はたくさん出てくる。“自分を卑下するなんて、自分に誠実じゃない”とか、“わたしはわたしの方法でやったんだ(省略)よかったもん”とか、“心から笑うとき、ひとはみな美しい”などなど。他にも挙げきれないほどたくさんある。著者は、決して主義主張を押しつけているわけではない。100人いたら、100通りのやり方生き方があるよ。貴方は貴方でいいんだよ。そんなことを伝えているように感じられる。それが何とも心地よくて、私はこの本との出会いに感謝した。T先生と出会わなければ、この本を手に取ることもなかったかもしれない。そう思うと、人とのひとつひとつの結びつきを大切にしたくなる。

4480031464まるごと好きです (ちくま文庫)
工藤 直子
筑摩書房 1996-04

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