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2005.07.20

カラフル

20050412_026 大きな過ちを犯して死んだ罪な魂の中から、運良く抽選で選ばれると、もう一度下界に降りる再挑戦のチャンスが与えられる。誰かの体を借りてその人物になり、前世に犯した罪を思い出さなければ、輪廻のサイクルに戻ることはできない。そんな設定の下、生きるとは、家族とは、友情とは何か考えさせられる、森絵都・著『カラフル』(理論社)。担当であるガイドの天使・プラプラに促されるまま、主人公の<ぼく>は、<小林真>という自殺したばかりの14歳の少年に乗り移る。

 <小林真>は、絵を描くのが得意な以外は、地味で背が低く冴えない雰囲気。親しい友人もいない。はじめのうちは、温かな家族というイメージだったのにもかかわらず、父親は自分だけよければいい偽善者(プラプラ情報による)で、母親はフラメンコの先生と浮気中。口の悪い兄は、冷ややかである。好きな女の子は、中年オヤジと援助交際中。気が滅入りそうな環境の中、ホームステイのような気楽さも手伝って、しっかり周囲を見回してみると、<小林真>の日常は、そんなに単純ではないことがわかってくる。

 <ぼく>は、ホストファミリーを騙していることへの罪悪感を覚える。<ぼく>が乗り移ったことで、<小林真>が奇跡的に生き返ったのだと信じている家族の言葉を痛く思う。家族にとって、生き返ったその一瞬の出来事は大きな喜びとなり、それまでの全てを精算してあまりあるものだった。次第に増えていく取り返しのつかないものたちの数。<小林真>の代役で引き受けるには、荷が重過ぎる出来事の数々。死んだ<小林真>が聞くはずだった言葉たち。<ぼく>にしかわからない悔しさが、あまりに切ない。

 物語が進めば進むほどに、<ぼく>の気持ちはさらに切なさを増す。<小林真>の傷にとらわれ過ぎて、無頓着だった周囲の人々の傷。この大変な世界では、きっと誰もが同等に傷を持って生きているということ。<小林真>は、早まり過ぎたということ。遅過ぎることなんてなかったことを。そして、途中に出てきた言葉がいつまでも胸に響く。“人は自分でも気づかないところで、だれかを救ったり苦しめたりしている。この世があまりにカラフルだから、ぼくらはみんないつも迷っている。どれがほんとの色だかわからなくて。どれが自分の色だかわからなくて。”

4167741016カラフル (文春文庫 も 20-1)
森 絵都
文藝春秋 2007-09-04

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コメント

読み終わってみると、すごくいいタイトルですよね…!大好きです!

投稿: chiekoa | 2005.07.20 19:12

chiekoaさん、コメント&トラックバックありがとうございます。
私もこのタイトル、大好きです!
森絵都さんの作品に、はまりつつあるこの頃♪楽しいです。

投稿: ましろ(chiekoaさんへ) | 2005.07.21 17:50

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カラフル森 絵都理論社 1998-07 前世で何かひどい「悪事」を犯して死んだ「ぼく」。悪事を犯して死んだ魂が輪廻のサイクルに戻るためには、下界の誰かの体を借りて、自分のした悪事を思い出さないといけません。乗り移ったのは「小林真」という自殺したばかりの14歳の少年。天使のプラプラをガイド役に、真として人生に再挑戦することになった「ぼく」は…。 いわゆる「児童文学」というジャンルになるのでしょうか。テンポよくさらっと読めました。リアルなようなリアルじゃないような(ちょっと!そんなふうにいく... [続きを読む]

受信: 2005.07.20 19:11

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