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2005.06.01

この本が、世界に存在することに

20050527_166 本をめぐる9つの物語を収録した、角田光代著『この本が、世界に存在することに』(メディアファクトリー)。この本を読んで、真っ先に思ったことがある。それは、本と人との繋がりが人と人とを繋いでゆくことである。最近頻繁に感じるその思いが、両の手に抱えきれない程たくさんつまっていた。そして、愛おしくてせつない気持ちにさせてくれる温かな短編は、私の中に眠っていた様々な記憶を呼び起こしてくれた。

 中学から大学時代にかけて、プレゼントするものされるものと言えば本だった。この本の中の「初バレンタイン」という話の主人公と同じように、自分の趣味を押しつけないように注意しながら慎重に選んだのを思い出す。そういうときは、読み物としてではなく目で楽しむようなものが多かった。絵本とか挿絵の多いエッセイだとか。私へのプレゼントとして友人が選んでくれるのは、決まって猫の写真集だった。きっと、毎日のように“猫、猫!”と言っていたのだろう。そういえば、いつも鞄には猫の写真が入っていたっけ…

 それから、私にとって“本”というのは友人以上のものだった。休み時間も授業中も通学中も(電車の中でも歩きながらも)、決まって読書に耽っていた。読書をしていない時間は、図書室か本屋で本を探していた。本の世界に浸っている時間が何よりも大切で、教室で孤立しようが友人が減ろうが気にしなかった。そんな私を受け入れてくれる友人や好きになってくれる人がいたことが、今となっては奇跡のようだと感じてしまう。あとがきで著者が言う“本の世界よりもせわしない現実”というのが、私にはなかったのかもしれないとすら思うほどに(もちろん、私にだってせわしない現実はあった)。

 そういう生活の中で、私が本以上に欲していたものが1つだけあった。それは、自分以上に本のことを知っている人の存在である。そういう存在は、ブログを始めてみて無限にいたことに気づくのだが。当時の私は、ごくごく狭い世界の中で好きな人の本の趣味に染まったり染められたりしながら生きていた。唯一、読書談義の出来そうな同級生(女)が一人だけいて、約束もしていないのにばったり図書室や本屋で会うことがとても刺激的だった。と言っても、挨拶ぐらいしかしなかったのだけれど。彼女も私もお互いの図書カードをこっそり見ていて、競うように本を読んだ。図書室の先生に“君たちはおもしろいねぇ”なんて、言われながら。彼女も私も相当なあまのじゃくだった。

 “本”にまつわるこの本のおかげで、懐かしい“本”との思い出に浸ることができた。友人たちは、私が贈った本をまだ持っているだろうか。彼女は今、何の本を読んでいるのだろうか。無性に会って話がしたくなる。けれど、やっぱり私はあまのじゃくで、一歩踏み出す勇気がない。あの頃とちっとも変わってないなぁと認めるしかない。

4840112592この本が、世界に存在することに (ダ・ヴィンチ・ブックス)
角田 光代
メディアファクトリー 2005-05

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13 角田光代の本」カテゴリの記事

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コメント

はじめまして、しろくまと申します。
突然で恐縮なのですが、私がライターをしております「blog-gold」という面白いblogを紹介するサイトの6/2の担当記事にてこのblogを紹介させていただきました。
ぜひよろしければ一度ご覧になってください。

投稿: しろくま | 2005.06.03 00:38

しろくまさん、コメントありがとうございます。
早速、「blog-gold」へお邪魔致しました。取り上げていただきまして、ありがとうございました。とっても嬉しい紹介の言葉にじーんとなってしまいました。
今後もマイペースに励んで参りたいと思っております。

投稿: ましろ(しろくまさんへ) | 2005.06.03 18:48

こんにちは。
この本を読んでいると、自分のそれまでの本との交際歴を思い出してしまうものなのかもしれませんね…!
この本の中にはなかったけれど、図書カードにまつわる思い出は柊にもあって忘れられません(笑)
競うように本を読んでいたライバル!?が柊にもいました。
うん、でも彼女には全然追いつけなかったなあ…彼女は今も変わらず本を読んでいるのかしら。
図書館から借りたのだけど、手元に置いておきたくなるような本でした♪

投稿: | 2005.08.22 08:33

柊さん、コメントありがとうございます。
私も手元に置いておきたいと思いました!文庫化されたら、即買います。きっと。
文庫化してからぁ?と自分にツッコミつつ…

図書カードは、よかったですよね。
最近、片づけをしていたら高校時代のものが出てきたんですよ。
渋い作品名がずらりと並び、あぁ私も変わったのだなぁとしみじみしちゃいました。

投稿: ましろ(柊さんへ) | 2005.08.22 21:30

こんばんわ。
やっと読み終えたので、TBさせて頂きます。
かなり楽しめた1冊でした。
角田光代はやっぱりすごいと思いました。

最近は個人的に読む本、読む本面白くて本を読むという行為が改めて楽しい今日この頃です。
少し読書から離れていたのですが、また読書に没頭しそうです。

投稿: 桜井 | 2005.11.01 00:46

桜井さん、コメント&TBありがとうございます!
この本、ホントにホントに楽しめましたよね。
角田マジック(?)にまんまと引っかかって、自分の中に潜む本に纏わる話を思い出しちゃいました。

本を読むことが楽しいって、いいですね。
読む本読む本面白いっていうのも羨ましいです。
私はなかなかしっくりくる本と出会えないので…更新してないときは、当たり本と出会えてないときです。

投稿: ましろ(桜井さんへ) | 2005.11.01 08:34

 コメントをいただきまして、ありがとうございます。私も、この本を読んでいるうちに、本にまつわる思い出が(数は少ないのですが)蘇ってきました。本に対する愛情やノスタルジーを再確認できました。

投稿: moritomoaki2001 | 2005.11.05 03:10

moritomoaki2001さん、コメントありがとうございます!
1冊の本によって思い出される出来事があることって、とっても幸せな気がしています。
自分の中に潜んでいた愛情、ノスタルジィ…などなど、それらを再確認させてくれたこの本に感謝です。

投稿: ましろ(moritomoaki2001さんへ) | 2005.11.05 07:42

こんばんは。この本読んでると私もましろさんみたいに
自分の本読み歴史をつらつら書きたくなりました。
長くなるうえに恥ずかしい話も多いのでやめましたが(笑)
今もたくさん本を読んでるけど、昔と比べると1冊1冊の本の重みが薄まってるような気がしました。大事に読んでいきたいな。と思います。
TBさせてもらいました。

投稿: ざれこ | 2005.12.24 00:06

ざれこさん、コメント&TBありがとうございます!
自分の記事を読み返してみたら、結構恥ずかしかった…です。
何を書いてるんだ私は(笑)
ざれこさんの本読みの歴史、読んでみたい気がします。かなり興味があります。
本の重みはどうなんだろう。
目に見えるカタチで残している分、心には残っていないのかもしれません。
でも、十代の頃はポーズとしての読書も多かったなぁと思い出したりもして。
私も大事に読んでいきたいと思います!

投稿: ましろ(ざれこさんへ) | 2005.12.24 20:26

はじめまして。

この本、私も大好きです。
本が好きな人には共感できるところが多い一冊でしたね。

トラックバックいたします。
どうぞよろしく。

投稿: ぱんどら | 2006.01.01 18:33

はじめまして。コメントありがとうございます!
“本好きによる、本好きのための作品集”みたいな本ですよね。
そして、ますます本の虜になってしまうような。
この本は、きっとずっと大好きでいると思います。

こちらの不具合かトラックバックできなかった様子。
もし、よろしければまたよろしくお願い致します。

投稿: ましろ(ぱんどらさんへ) | 2006.01.01 22:03

こんにちは。はじめまして。
TBさせていただきました。
この本のTBを追いかけていくことで、たくさんの本好きなひとたちに出会えてうれしいです。

わたしもそうですが、思わず自分の本の思い出を語ってしまいますね。

投稿: chloe | 2006.02.11 23:19

はじめまして、chloeさん。
コメント&TBありがとうございました!

さまざまな本に纏わる思い出を、呼び起こすような作品ですよね。
この作品がきっかけになって、いろんな方々の本に関するこだわり、
熱き思いのようなものを知ることができて、とても興味深いです。

投稿: ましろ(chloeさんへ) | 2006.02.12 15:27

こんにちは。TBさせていただきました。

年を経るにつれ読書する友達の数が減ってまして。みんな他に楽しいことをたくさん見つけてるんでしょうね。でも自分の興味は尽きるどころか,もっともっと読みたい!と思っているのです。笑わせてくれたり大切な言葉をくれたり支えになってくれる本たちは,いつも静かにわたしに寄り添ってくれてます。…なんかそんなことを,このお話を読んで再認識しました。すてきな本でした。

投稿: mamimix | 2006.04.02 07:14

mamimixさん、ありがとうございます!
読書よりも楽しいこと…私には1つもない気がしております。
他になにがあるんでしょう?と問いたくなるくらいに(笑)
“本たちが寄り添ってくれる”って、すごくいいですね。
両想いな感じがします。私の思いも通じているとよいナと思います。

投稿: ましろ(mamimixさんへ) | 2006.04.02 19:02

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