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2005.06.06

猫と庄造と二人のおんな

20050601_050 美しい毛並みと愛らしい性質を持ち合わせた雌猫リリー。その1匹の猫に翻弄され、破滅してゆく人間の姿を描いた、谷崎潤一郎・著『猫と庄造と二人のおんな』(新潮文庫)。猫を溺愛してやまない愚味な男、猫に嫉妬して何とか追い出そうとする女、男への未練から猫を引き取りたいと申し出て男の心を繋ぎ止めようとする女。3人それぞれの考え、気持ちの揺らぎ、行動などが実に滑稽に映る。猫に翻弄されて日々を過ごしている私には、とても人事のようには思えないのだけれど…

 この物語は、そのタイトルが示すように猫が最上位であり、女が最下位として描かれている。女たちは、妻の座にあろうがあるまいが、競って庄造の愛を得ようとしている。けれども庄造は、女たちよりも自分自身よりも何よりも猫を可愛がっている。それほどの愛情を注いでいながら、猫は残酷なまでに庄造を裏切る。リリー(ゆり)という純粋性の象徴のような名の猫は、その純粋さゆえに気まぐれなのである。その気まぐれさも猫の魅力であることを考えれば、庄造の心の中には、猫への愛情がずっと残るであろうことが予想される。そう、一番報われないのは女たちなのだ。猫がたまらなく愛おしい私は、女であるから少々せつない。

 気がつけば、生活の中には必ず猫の存在がいた私にとって、物語の前半で庄造が猫に対する思いを語っているところはもの凄く頷けた。それは、“猫の性質を知らない者が、猫は犬よりも薄情であるとか、無愛想であるとか、利己主義であるとか云うのを聞くと、いつも心に思うのは、自分のように長い間猫と二人きりの生活をした経験がなくて、どうして猫の可愛らしさが分かるものか”というところ。第三者がいるときには、主人に甘えることなくよそよそしい猫が、1対1になると呼びもしないのにすり寄ってくるとき。膝に乗ってきて気持ちよさそうに喉をゴロゴロ鳴らすとき。ざらざらした舌で顔を舐めてきたり、あま噛みしてきたりするときなんかたまらないのにと思うから。

 1番ひいきに可愛がっている猫に限って言うなら、夜眠くなると小さな赤子のように愚図り出すのだからもの凄く愛おしい。こっくりこっくりしながら、眠気と戦う姿なんてもうたまらない。いろんな猫を飼ってきたのだが、ドアや襖を開ける猫というのは初めてだったし、話していることがわかるみたいにじっと目を見る猫というのも初めてである。一人で泣いているときに、すり寄ってきて涙を舐めてくれるのも。カメラ目線でポーズをきめてくれるのも。こんなに可愛らしい生き物が他にいるかしらとすら思ってしまうくらいに。3匹飼っている中でも、私が特別に愛している1匹はキレイ好きなのも加えておく。10年も一緒に過ごせば、誰もがそうなってしまうのかもしれないけれど、私は猫にイカレテいる。だから、この物語がたまらなく好きなのだろう。

4101005052猫と庄造と二人のおんな (新潮文庫)
谷崎 潤一郎
新潮社 1951-08

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コメント

ニャンコもいいですが、たまにはワンワンのネタもお願いします!(^_^)/~

投稿: デミアン | 2005.06.08 22:04

デミアンさん、コメントありがとうございます!
ワンワンネタ…うーん、頑張ってみますね。

投稿: ましろ(デミアンさんへ) | 2005.06.08 23:19

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» 「猫と庄造と二人のをんな」 [邦画ブラボー]
堪能しました。 海に近い芦屋の通り。 りり〜という猫を異常に可愛がる庄造(森繁久彌)を巡って 女たちが争う。原作は谷崎潤一郎。 この映画は 「猫と庄造と三人のをんな」というべき内容。 三人とは、 アプレなふくちゃん(香川京子)、 前妻品子(山田五十鈴)そしてもうひとりは庄造の母(浪花千栄子)。 香川京子が形のいい脚を勢いよく投げ出したり、庄造をヒステリックにいじめたりする。 清楚なイメージを気持ちよくぶち壊す体当たり演�... [続きを読む]

受信: 2005.06.24 22:23

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