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2005.06.04

世にも美しい数学入門

20050601_035 新書を読んで、ふふふっと笑ったのは久しぶりだ。こんなにも人柄が全面に出ているものだったかしら。こんなにするっと読めてしまっていいのかしらと少々戸惑いながら、藤原正彦/小川洋子・著『世にも美しい数学入門』(ちくまプリマー新書)を読み終えた。数学者でエッセイストの藤原正彦氏と、小説『博士の愛した数式』の著者である小川洋子さんの対談の形式になっている。“ユニークな語り口の先生”と“鋭い質問をなげかける生徒”といった感じで、数学の美しさについて、その歴史的背景についてなどを詳しく教えてくれる。ちなみに、笑ってしまった部分は此処には敢えて書かないでおく。

 この2人を結びつけたのは、藤原氏の『天才の栄光と挫折』や『心は孤独な数学者』を読み、触発された小川さんが『博士の愛した数式』を書いたことに始まる。家政婦とその10歳になる息子、数学の老博士の3人に通い合う愛を、数学と野球とを結びつけて描いた心温まる小説である。その中で、最も印象深い数学の話が「友愛数」のことである。「友愛数」という名前も詩人的でいいのだが、博士と家政婦との繋がりとして用いられているのだ。雑談をしているとき、家政婦の誕生日2月20日と知った博士が自分の時計(かつて書いた論文でもらった学長賞の記念品)の裏に書かれている284という数字を見せながら、説明する。220と284の繋がりについて。君と私の繋がりについて。

 小説を読んだときには、さりげなく何気ない場面としてさらっと読んでしまったのだが、「友愛」という言葉だけで、小川さんは一番最初にこの場面のことを考えたと言う。西日のあたっている光線の様子、流し台で垂れている水滴の音、台所の食卓についている傷の模様、鉛筆を持つ博士の手の表情などと一緒に。そもそも「友愛数」というのは、自分自身を除いた約数の和が220(1+2+4+5+10+11+20+22+44+55+110)なら284に。284なら220になるというもの。他にも、3つ以上の数字が友愛数となる「社交数」なんていうものまであるとか。何とも奥深い数学と文学の世界である。

 そして、一番熱心に語っていたのではと私が思ったのは、日本人の精神について述べられている「フェルマー予想」の章。様々な定理や証明の発見に日本人がかかわっていたというお話である。よく評論家や学者が“日本人に独創性がない”と批判するのを聞く。けれど、藤原氏は言う“日本人というのは、ほんとうにすごい独創性、美的感受性を持っている”と。そうして誕生した美しいものがあると。その後に語られたのは、アテネオリンピックでの室伏選手の話。順番がくるまでフィールドで仰向けになって、精神統一をしていた室伏選手。“そのときなにを考えていたんですか”と聞かれ、“星を見ていました”と答えたそうである。大変なときに平静な心で星を見ていられる精神、うんうん素晴らしいじゃないですか。

4480687114世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)
藤原 正彦
筑摩書房 2005-04-06

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コメント

初めまして。この本、私も買ってきて、読み始めています。
中学生の娘の学習支援(?)のつもりで、いろいろな数学関連本を探していたことから知ったのですけど。

ここのブログ自体についてですが、猫ちゃんの写真がステキですね。
私はどちらも関心があるんですが、ブログを分けてしまっているので、こんな方法もあるんだと目からウロコでした。
これからもちょくちょく読ませていただきにきますね。

投稿: エリコ | 2005.06.05 10:17

エリコさん、コメントありがとうございます。
数学の本なのに、数学に関係のないことばかり書いてしまいましたが、とてもわかりやすく数学の美しさを教えてくれる貴重な本だと思っております。
猫写真は…下手です。恐縮です。
エリコさんの「猫も歩けば。。。」も拝見させていただきました。3匹の猫ちゃんが、とっても可愛くてみとれました。私も3匹飼っているのですが、どうしてか1匹だけ写真が少ないです。

投稿: ましろ(エリコさんへ) | 2005.06.05 11:40

あ!これ、読んでみようと目をつけてた本だ!
先を越されてしまったなー(^_^;)

投稿: デミアン | 2005.06.06 07:36

デミアンさん、コメントありがとうございます。
わー!読んでいる本が重なるのって、珍しいですねー。
デミアンさんの記事、楽しみにしております。

投稿: ましろ(デミアンさんへ) | 2005.06.06 20:58

こんにちは。
TBさせていただきました。
小川さんはもちろん、藤原先生がチャーミングなのにびっくりしました!

投稿: ミチ | 2005.06.07 16:20

ミチさん、コメント&TBありがとうございます。
藤原先生の話はとっても人柄があらわれていて、いいですよね。私も好きです。
小川さんは、品のある方のように感じました。

投稿: ましろ(ミチさんへ) | 2005.06.07 21:12

記事へのリンク&TBありがとうございます!
室伏選手の話と「フェルマー予想」に日本人がかかわっていたという話、すごいなぁと感心しながら読みました。
また、全体を通して日本人の美意識や独創性にもっと自信をもってもいいかもとも思いました。
一応は数学について語られた本なのに、文化などの話を考えられるのはおもしろいですよね♪

投稿: 大葉 もみじ | 2005.10.13 11:45

もみじさん、コメントありがとうございます!
学問と文化の繋がりって素晴らしいなぁと強く感じる本でしたよね。深く。そして広く、数学の魅力を伝えているように思います。
それから、私が日本人って素敵だな、日本人でよかったなと思えたのは、多分この本が初めてでした。
面白くて目からウロコ本ですね♪

投稿: ましろ(大葉もみじさんへ) | 2005.10.13 13:03

追伸です。
この記事にリンク&TBさせていただきました。
ずっとしようと思いっていたのですが、遅くなってしまいました。

最近、昼夜の寒暖差が激しいですが、風邪などひかぬようお気をつけくださいね。

投稿: 大葉 もみじ | 2005.10.18 23:32

もみじさん、再びコメント&TBありがとうございます。
いつでも大歓迎ですので、どうか気になさらずに!

ホント最近寒暖の差が激しいですよね。今、まさに体調を崩し中です…もみじさんはお気をつけてくださいませ。

投稿: ましろ(大葉もみじさんへ) | 2005.10.19 20:09

ましろさん☆リンクありがとうございます。
美を理解できない人には数学は極められないって、もの凄いことばですよね。
数学を理屈ではなく、美学として語ってくださる藤原先生、とってもステキでした。
これからも、よろしくお願いします。

投稿: Roko | 2005.10.24 21:53

Rokoさん、コメント&TBありがとうございます!
ご挨拶が遅れまして、すみません。
藤原先生、とっても素敵ですよね。
わかりやすい言葉で説明してくださるから、一言一言が自分の中に浸透しやすかったかもしれないなぁと、思っています。
こちらこそ、今後もどうぞ宜しくお願い致します。

投稿: ましろ(Rokoさんへ) | 2005.10.25 07:41

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