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2005.05.27

文鳥

20050527_169 「ユリイカ」の臨時増刊号・川上弘美読本の“誌上再現、カワカミさん家の本棚”のページを読んでいたら、夏目漱石著『文鳥・夢十夜』(新潮文庫)が無性に読みたくなった。国民的な文豪の作品は、すごく久しぶり。ページを開いただけで、文字の並びが何ともいい佇まいをしていた。改行が少なくて密度が濃い。透徹した文体には、もちろん無駄がない。時代を超えて読まれ続ける小説というのは、やはり素晴らしいものなのだなぁと思った。

 『文鳥』という小説は、人に勧められるままに文鳥を飼い始めるのだが、家人のちょっとした不注意であっけなく死なせてしまう話。最初から最後まで淡々としていて、文章は決して乱れることなく書かれている。日常のありふれた一コマを描いているように見えながらも、その背後にある生きることの儚さや人間の残酷さというものを思わせる。可憐な文鳥と過去の女性の記憶とが重ね合わせられる場面では、せつない哀愁のようなものが漂いじーんとなってしまう。深い、深いなぁ。何度も読み返して噛みしめたくなるような小説だ。

 この小説の中で印象深かったのは、文鳥をしきりに勧めた鈴木三重吉の小説には、文鳥が“千代々々”と鳴くと書かれているらしいと説明されているところ。“千代々々”とは。可愛い。可愛過ぎる。しかも、その言葉を三重吉が何度も使っているのは、千代という女性に惚れていたことがあるのかもしれないと思いをめぐらす主人公。そんなことは一向にかまわないというような口ぶりなのに、文鳥が鳴かないことについて気をもむ。これもまた可愛い。こんなことを思うのは本当に申し訳ない気持ちになってしまうのだが、正直な率直な私の思いだ。淡々と書かれているから、余計にこんなことを感じてしまったのかもしれない。

4101010188文鳥・夢十夜 (新潮文庫)
夏目 漱石
新潮社 1976-07

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コメント

ましろさん、こんばんは☆

自分のブログにコメントしたことがまたもや起こっていて「う~わっ」と言わずにはいれません。

まさしくユリイカの同じ特集本を読んでいてほんのついこの間、漱石のこの本と内田百閒を買いに走ったとこなのですよw

まさに本はつながる!ですねぇ。
この高揚感を誰に伝えよう・・。

投稿: Kazuma | 2005.05.28 21:53

Kazumaさん、コメントありがとうございます。
私も、うーわー♪となりましたよ(笑)一緒ですね。2年前のユリイカというのがポイントですね。
内田百閒、図書館で借りてきたんです!Kazumaさんのブログの角田光代さんの『この本が、世界に存在することに』も。おぉー読もうと思っていた本が載っているぅと。
ホント、不思議な感覚ですね。

投稿: ましろ(Kazumaさんへ) | 2005.05.28 22:27

お~、なんと、ましろさんも同じことになっていましたかw
なんだかうれしいですねぇ。
なんとなく「ましろさん」から「まーちゃん」になるような感覚です♪(ってなんのこっちゃ)

ちなみに”図書館で借りて読んだ本”ってことで言えば「ニシノユキヒコの恋と冒険」がそうでした~。
ぶらぼー(^^

投稿: Kazuma | 2005.05.29 02:39

おはようございます。
夏目漱石はいいですよね!静かな展開の中に何とも言えない「味」が感じられます。
ちなみに、月並みですが、僕は夏目漱石の作品の中では「こころ」が一番好きです。
「こころ」に限らず、漱石の作品には現代でも色褪せない、おもしろさや感動があります。やはり本当の文学作品というのは、こういうものを指すのでしょうね。

投稿: デミアン | 2005.05.29 09:20

Kazumaさん、再びコメントありがとうございます!
まーちゃん…(笑)
私もとっても嬉しいですよぉ。ウキウキし過ぎて、どうしましょっという感じです♪
読書ってこんなに心弾むものだったかしら。

投稿: ましろ(Kazumaさんへ) | 2005.05.29 15:45

デミアンさん、コメントありがとうございます。
ほうほう、「こころ」がお好きなのですね。やはり名作ですよねぇ。私は、平成版「こころ」と言われている島田雅彦の「彼岸先生」も好きです。この本がきっかけで、名作を読み直そうと心を入れ替えたほどでした。“きっかけ”って、大事なものだなぁとこの頃思います。

投稿: ましろ(デミアンさんへ) | 2005.05.29 15:57

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