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2005.05.30

今、何してる?

20050501_015 恋愛と旅と本に関するエッセイである、角田光代・著『今、何してる?』(朝日文庫)。どの文章も正直で率直な気持ちを書いている感じがして、心地よく楽しく読むことが出来た。こういう本は、とても好きだ。ずっと長い間、自分の考えていることがだいたい標準(ごくふつう)なのではないかと思っていたという著者。みんな似たり寄ったりのことを考えているのだろうと。そんな著者の可愛らしくもシビアな一面を覗かせてもらった気がする1冊である。

 私がほうほうと納得してしまったのは、「相性Affinity」というお話。相性というのは、恋愛においてかなりの頻度で語られるものである。けれど、そもそもその“相性”って何だろうか。自分が素であるときに相性がよいのだろうか…そう著者は考える。私の中では、「まるごと好きだと言ってくれて、まるごと受け入れてくれる人」という夢見る夢子ちゃん的な理想がある。要は、“自分を肯定してくれる”というのがポイントなのだが。そこで問題なのが、好きな人の前にて“まるごと(あるいは自分)”というのが、素の私かどうかということである。そこでよくよく考えてみたら、好きな人の前での自分とそうでないときの自分というのは、かなり態度が異なるものだということに気づく。

 著者曰く、接する人によって自分の知らなかった部分が強調されてしまうらしい。それが、プラスの面だったりマイナスの面だったりするようなのだ。プラスばかりだから万事快調というわけではなく、長続きする関係というのはマイナスばかりでもあり得るのだ。そうなると、“相性”なんて存在しないも同然である。自分がこれまで抱えてきた、経験、価値観、優先順位というようなものが、他者とぶつかって示した反応を好ましく思えるのかどうかにかかっているのだと考えることが出来る。なるほど。生年月日で相性はどうかしらなんて六星占術で調べてみても、ダメなものはダメなのだろう。

 それから、かなりショックだったお話がある。ヘッセの『ラテン語学校生』からの名言から始まるエッセイに出てくる“ボート破局説”である。実は私、デートにてボートに乗ることにものすごく憧れを抱いていた。プロフィール(ましろの前略プロフィール)にも、手漕ぎ限定で大きな池か小さな湖でボートに乗りたいと書いているのだ。水の上に漂う感じが好きで、時間を忘れてゆったりと物思いに耽りたかった。何を話すわけでもなく、そうやって過ごすことができる相手と一緒に。エッセイには、実に奥深い“ボート破局説”が書かれているわけだが、それでもやっぱりボートに乗りたい私だった。

4022643447今、何してる? (朝日文庫)
角田 光代
朝日新聞社 2005-03-17

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コメント

ましろさん、はじめまして。
トラックバックをさせていただきました。
実はわたし、“ボート破局”の体験があるんです…好きな男のひとと、井の頭公園のボートに乗ったら、
なんとなくうまくいきかけていたはずだったその恋は、見事に破局しました。
角田さんは書いていらっしゃらないけれど、井の頭公園の池の真ん中に祀られているのも、嫉妬深い弁天様だったり。
ただ、ボートに乗っていたその時間の記憶自体は、わたしの中では物凄く美化されている、とてもいい思い出だったりもします。

投稿: kimukana | 2005.07.15 14:25

kimukanaさん、コメント&トラックバックありがとうございます。
井の頭公園でボート…それはそれは。
やはり、嫉妬深い弁天様は本当にいるのでしょうか。
池だからいけないのかしらと、湖に望みをかける私(やっぱり諦めていない)です。
川っていうのも、もしやアリかしら。なんて。

投稿: ましろ(kimukanaさんへ) | 2005.07.15 17:08

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角田光代『今、何してる?』(朝日新聞社)[bitway][amazon] Do You Love Me? 前半は恋愛について、後半は本と旅について書かれた、読みやすいエッセイ集である。 好き?好き?大好き?私のこと、本当に好き?どのくらい好き?どこが好き? そんな風に、恋人あるいは配偶者から訊かれたら、どう答えますか?これは特に男性に答えを考えておいてほしい問い。そんな風に、恋人あるいは配偶者に訊いたら、どんな答えが返ってきますか?これは主に女性に答えを教えても... [続きを読む]

受信: 2005.07.15 14:21

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