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2005.05.15

チョコリエッタ

20050511_018 “私はチョコリエッタ。うそ”という書き出しから惹かれてしまった大島真寿美・著『チョコリエッタ』(角川書店)。何となく表紙の文字とイラストに見覚えがあったので、どこで見たのだっけと本棚を探してみたら、川上弘美・著『あるようなないような』(中公文庫)と同じ門馬則雄さんのイラスト。何ともいえない味のある可愛らしさがいい。私の好みのタイプだと言ってまわりたいくらいである。

 この『チョコリエッタ』の主人公は高校生の知世子。幼い頃に事故で母親を亡くし、父親と父の妹と3人で暮らしている。母が名付け親である犬のジュリエッタが死んでから、はっきりと様々なことが変化し始めた。十年以上も母親代わりになってくれた父親の妹が結婚したがっていること。父親には、再婚相手になってくれそうな人がいること。“人間なんてまっぴら”だと思うようになった知世子。幼い頃に母親が自分をこう呼んでいたことを思い出す。“チョコリエッタ”と。

 学校なんて今やめたっていい。知世子はずっとそう思ってきたけれど、母親代わりの父の妹を困らせまいとして耐えてきた。本当は1週間だけの留守番をするはずだった彼女が、出ていってしまわないように。そうやって、幼い頃から知世子は気を遣いながら生きてきた。もちろん、父親にも。親戚にも。けれど、高校2年になってからがらりと変わる知世子。髪を極端に短く切り、進路調査では“犬になりたい”と書き、夜遅くに帰宅する。そんな知世子が愛おしく思えるのはどうしてなのだろう…読みながらいろいろあれこれと考えてしまった。

 愛おしく思えるワケの多くを占めているのは、きっと幼い頃から高校時代までの記憶に関係しているような気がする。思い返してみれば、私も気を遣いながら生きていた。自分の本当の気持ちを押し隠しながら、黙って耐えていた頃の記憶がどっと溢れてくるのを感じた。あぁ、思い出してしまった。高校時代にぷつりとキレてしまったことを。大人しいように見えて、実はものすごく反抗するようになってしまったことを。自分でも驚くほどの頑固さを発揮してしまったことを。

 そう、私は知世子に通ずるものを過去に持っていたのだった。ここが似ているあそこが同じとかではなくて、同じ種類の同じ雰囲気の同じ年代特有のもの。そういうものを感じるのだ。時間が経つと、あの頃はこうだったああだったと笑いながら話せるような、とても話せないような、そういうこと。季節が過ぎて、年月が経って、成長して…そんな中の途中途中で思うこと感じることが丁寧に描かれている。そんなお話だと思った。

4048734466チョコリエッタ
大島 真寿美
角川書店 2003-03

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コメント

この本を読んで、映画「道」を無性に観たくなったのだけど、近所のレンタル屋さんには置いてありませんでした。
最近は、名画といえど、古い映画はおかれていないのね…と思うとちょっと寂しくなりました。残念です…☆
BSあたりで放映されないものかと期待してます(笑)

投稿: | 2005.05.17 09:15

柊さん、コメントありがとうございます。
私も「道」観てみたいと思いました。フェリーニの名すら知らなかったので。本当に無知です、私。よく行くレンタル屋さんを探してみようと思ってます。でも、たぶんなさそうな予感…
なつかし映画劇場みたいなので、“フェリーニ特集”組まれたらよいのになぁと私も期待しております。

投稿: ましろ(柊さんへ) | 2005.05.17 22:51

チョコレートが好きなのでタイトルに惹かれました(笑)
ここにくると、必ず読みたいものに出会えるんだよなぁ。
←の「美人の日本語」も、ぜひ欲しい一冊ですね。

フェリーニといえば、「道」は名作と言われるだけあって心に残る作品でしたが、
他のものは苦手かも・・・(;^_^A
ちょっと宗教チック?で私には難しいんです。トホホ。

投稿: ヒロト | 2005.05.19 09:35

ヒロトさん、コメントありがとうございます。
嬉しい言葉をいただけて、とっても喜んでおります♪
日本語に関するものや話し方に関する本って、最近とっても多いですよね。どれを読んだらいいのか迷っていたところ、「美人の日本語」に出会いました。まだまだたくさん勉強しなくちゃいけないのだなぁと思っています。
フェリーニの映画、ご存知なのですね。「道」、ますます観たくなりました!

投稿: ましろ(ヒロトさんへ) | 2005.05.19 21:12

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