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2005.04.20

寡黙な死骸 みだらな弔い

 奇妙で不思議な怪異小説である小川洋子著『寡黙な死骸 みだらな弔い』を再読した。しとしと雨の降る日にぴったりな小説だった。満たされぬ想い、交錯する時間、目の前に広がる甘美な死の世界。妖しさと幻惑が絡み合い、紡ぎ出す美しくも残酷な物語…。

 11の話がそれぞれに強い存在感を放ち、光と影を教えてくれる。冷蔵庫で死んだ息子の話の「洋菓子屋の午後」、少年とおとなしい少女の奇妙な1日を描いた「果汁」、小説家と不可解な行動と言動の大家さんの話の「老婆J」、汽車で亡くなった母の元へ向かう男性の思い出を描いた「眠りの精」、秘書室で働く女性が主人公の「白衣」、鞄屋の主人のもとにやってきた女性の話を描いた「心臓の仮縫い」。

 人がたくさん死んだ1日に辿り着いた館の話の「拷問博物館へようこそ」、亡くなった伯父の思い出を綴った「ギブスを売る人」、夫の浮気相手を訪ねるかどうしようか迷う女性の話の「ベンガル虎の臨終」、取材のために訪れたホテルで出会ったおばさんの話の「トマトと満月」、年老いた私と音楽の勉強に励むいい声を持つ少年の話の「毒草」。

 ちょうどいい長さの物語が連なって、前に登場した人物が新たな人物によって語られていく。語り手が変わっても、静けさの満ちる温度は変わらない。淡々としているのに、何とも心地よい佇まいである。決してハッピーエンドとは言えない物語世界なのに、なぜか不思議と悲しくはない。生暖かい温度を保っている。やはりいい作品だと思う。

4122041783寡黙な死骸 みだらな弔い (中公文庫)
小川 洋子
中央公論新社 2003-03

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