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2005.04.17

まどろむ夜のUFO

2005417_023 装丁の好きな本というのがある。鮮やかなオレンジ色に浮かんでいるUFOらしき物体と白いタイトル。うーん、カバーデザインが何ともよい。角田光代著『まどろむ夜のUFO』である。私がこの本を手に入れてから6年以上経つ。色褪せそうで褪せない柔らかなオレンジに魅せられて大切にしている。少し前に、他の出版社から再出版されて、表紙のデザインは大きく変わってしまった。滅多にこのオレンジを見ることはもうないのだと思うと、さびしい。手元にあってよかったぁ…しかも、私が角田作品と最初に出会ったのがこの『まどろむ夜のUFO』だったのだ。オレンジ色に惹かれるままに即買ってしまったのが縁となった。

 舞台となるのは東京。一人暮らしをしている主人公のもとへ、夏休みの間だけ高校生の弟・タカシが田舎から出てくることになった。2年ぶりの再会である。夏期講習を受けに行くということであったのだが、どうやら他の予定があるらしい。東京に住む彼女に会うために来たようなものであるらしい…電車の中で出会ったという独特の佇まいの恭一と、すぐに親しくなったと喜ぶ。いつの間にか弟は主人公の部屋に自分のスペースを作り、妖しげな行動を繰り返し見せる。

 サダカ君は、主人公の恋人というか友だちというか…微妙な関係である。5日置きに会うきまり。時間制限ありの付き合いしかしないきまり。タバコ1本1本に番号をふって、番号とおりに吸ってゆくきまり。本棚はキチンと作者別に整理するきまり…などなど、異常なまでのこだわりをみせるサダカ君。弟と恭一に対して、あまり良い印象はない様子。

 弟は、恋する中学生の女子のようにクッキー作りやジャム作り始める。何故、高校3年生の男の子がそんなことを?今どきの高校生には、そういうことが流行っているのか?主人公は考える。そして、ふいに引っ越すと弟はいい出ていってしまう。

 同じ頃、主人公はサダカ君のところへ向かう。掃除を今終えたとばかりのきれいな部屋。本棚もクローゼットもキレイに整頓してあって隙もない。そんな空気を壊したくなって、サダカ君の寝ている隙にめちゃくちゃにして帰ってしまう主人公。それでも、主人公は唯一の常識人として描かれる。

 このお話では、若者の孤独やさみしさみたいなものをひしひしと感じる。魂を求めて公園に集い、円座になって手をつなぐ。よく知らない人(当人は知っていると言い張る)とホームレス生活をすることがありふれているように描かれる。その中には働いている者もいれば、学生の者もいる。年齢も性別も越えて仲間になるということができたら、新しい世界に導かれるのか…?何だか妖しい宗教のようでもあるのだが…自分だけでは抱えきれないことを話すことで救われる思いがする気がして…読むことをやめることができない。なぜか止まらないのだ。

4062739283まどろむ夜のUFO (講談社文庫)
角田 光代
講談社 2004-01

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