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2005.04.22

ふしぎな図書館

2005419_005 ひんやりとしていて静けさに満ちた場所。そこには、誰にも邪魔されることのないゆったりした時間が流れている。自分の好みの本だけでなく、様々な形の様々なジャンルのたくさんの種類の本たちが眠る場所。手にとってもらえるのを読んでもらえるのをずっといつまでも待っていてくれる書物たちが佇むところ。私の図書館に対するイメージはそういう感じだ。

 いつもよりずっとしんとした図書館での出来事を綴った文・村上春樹、絵・佐々木マキによる『ふしぎな図書館』。主人公の<ぼく>は、新しい革靴のこつんこつんという足音を気にしながら地下の107号室に案内される。そこに待ちうけていたのは、妙な話し方をする一人の老人だった。しゃべり方に負けずおとらず不気味な顔をした…

 <ぼく>は、居心地の悪さを感じて少しでも早く気味の悪い部屋から立ち去りたい気持ちを抱えたまま、老人の言うとおりにおとなしくしている。すみませんと謝ってばかりで、何かをきっぱりと断ることのできない流されやすい性格の<ぼく>。そういうところが何だかとても人間っぽい気がして、奇妙で不思議な物語を親しみやすい雰囲気にしているように思えた。

 本物の羊の毛皮をすっぽりとかぶった小さな男である<羊男>、<ぼく>と同じくらいの年の見ているだけで目が痛くなるくらいにきれいな女の子、心配し過ぎて夕食の時間に厳しい母親、<ぼく>の飼っている頭のよい可愛いむくどり、宝石入りの革の首輪をつけた緑の目と太い足と6本の爪を持つすごい大きな黒い犬…物語に登場するのは、奇抜だけれど心地よい印象を残していくものばかりである。特に羊というのと少女に対しての描写が私の苦手な村上春樹っぽい。

 物語の中でこともなく流れる世の中と美しい少女が語るそれぞれの世界。みんながそれぞれに自分のことを考え、それぞれに生き続ける。そして、<ぼく>には<ぼく>の世界が、羊男には羊男の世界が、少女には少女の世界が存在する。自分の世界に存在しないものがあったとしても、それが存在しないことにはならない…重なり合うものとそうでないもの、そういうものがあるということを密やかに教えてくれる物語『ふしぎな図書館』。短い夢をみていたような気持ちになった。

4062759489ふしぎな図書館 (講談社文庫 (む6-33))
村上 春樹
講談社 2008-01

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コメント

こんにちは。やっぱり本を読まないと駄目ですね、、、とっても強迫観念に襲われるこの頃。。。読もうと思って待機している本たち、待っててねー。

ここのブログを拝見させてもらってのわたくしの感想でした。では。

投稿: kou | 2005.04.23 09:45

kouさん、コメントありがとうございます。
ブログ、拝見させていただきました。
英語が堪能なのですね…ほとんど読めず、自分の語学力のなさを再実感致しました。
振り返ってみれば、日本の作家さんの本ばかり読んでいるし。
実に偏った読書傾向です。反省。

投稿: ましろ(kouさんへ) | 2005.04.23 18:00

ましろさん、こんにちは。
私はこの手の村上作品が好きです♪
本屋でこの本を見たとき、どうも読んだことがあるような気が…新刊なのに…??と思ったら『カンガルー日和』に収録されていた作品とのこと。
最近の作品は少々遠い感じがしていたので、昔の作品でもこうして改めて出版されるのは嬉しいですネ。
ても本当はまっさらな新作で、またこういったムードのお話が読みたいんですけど…ね。

投稿: ゆら | 2005.04.24 07:28

ゆらさん、コメントありがとうございます。
『カンガルー日和』、お好きだったのですかぁ。やはり最近の作品よりも読みやすいですよね。同感です。完全な新作で『ふしぎな図書館』みたいな本がでたら、きっと私も読みたくなるのだろうなぁ…挿絵も好きですし。

投稿: ましろ(ゆらさんへ) | 2005.04.24 14:41

再度、こんばんわぁo(^-^ o )(ノ ^-^)ノゃぁゃぁ♪

わたしのブログに、ましろさんのブログをリンク張らせていただきました。事後承諾ですが、、、m(_ _)m

なかなか本を読める気構えが、、、(寝床に本を持ち込んで、5行で夢の中。。。)戒めの気持ちを込めて、リンクを張りました。ましろさんのブログを参考に、刺激に、読書を加速させたいものです。

読書関連での話題は、、、わたしは、ましろさんの苦手な村上春樹が好きなことと、日曜日に図書館でアーサー・ミラーの戯曲を借りようと思ったら、ダスティン・フォフマン主演のビデオを借りてしまったことをお知らせします。ははは、つまらないコメントで、再度 m(_ _)m

投稿: kou | 2005.04.25 21:07

kouさん、こんばんは。
リンクを貼ってくださったのですか?
嬉しいです!ありがとうございます。
こちらは、Blogpeopleでリンクしようかと思ってます。
私も活字中毒なのにかかわらず、
最近は読むスピードが遅くなってしまって、
恐縮です…

投稿: ましろkouさんへ) | 2005.04.25 23:05

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» ふしぎな図書館 [A Confucian Confusion]
「新潮」3月号に掲載されている短編「偶然の旅人(東京奇譚集1)」の冒頭で、作者 [続きを読む]

受信: 2005.04.25 12:07

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