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2005.04.06

LOVERS

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 恋愛小説が妙に読みたくなったので、9人の作家による短編集『LOVERS』を読み返してみた。出会ったそのときから、言葉もいらずに始まる恋。恋ともわからないまま続く恋。北の大地にて冬の訪れとともに終わりを告げる恋。同級生との淡い恋。美しい男性との甘美な恋。初恋の男性に再び思いを寄せる恋。焦るような気持ちで男性を待つ不倫の恋など…。様々な関係の中で揺れ動く男女の姿を読むことが出来る。9人の作家陣は、江國香織、川上弘美、谷村志穂、安達千夏、島村洋子、下川香苗、倉本由布、横森理香、唯川恵である。

 江國香織作「ほんものの白い鳩」は、ひとりぼっちの主人公の強い独占欲が印象的である。潔癖なまでの強い恋心は、人をひとりにさせる。突然始まったそういう恋愛は、相手の心を時間をそして全てを奪ってゆく。今まで別々に生きてきた人生のこと、いくつかの恋のこと、今までに旅をした場所のこと、好きな音楽のこと、好きな食べ物のこと、嫌いな食べ物のことなどなどをひたすら話す。まるで何かに憑かれたように、ありとあらゆることを話す。いつも一緒に過ごす。収入の全てを相手のために使う。ときには兄弟であり、姉妹であった。互いをみつめすぎて、触りすぎて、相手の顔も身体も、細部まで記憶してしまった。すくなくともそう思えた…そんな切ないお話である。

 川上弘美作「横倒し厳禁」は、若さならではの奔放さが印象的である。若い女性と中年男性とのつかず離れずの関係は、親密なのに気まぐれな気がして2人の独特な空気感が漂っている。とてつもなく甘いようで、どことなくすっぱいような。暖かいようなそっけないような…。そんな関係。勝手で好き放題のようで妙に真面目な主人公の人柄も人間ぽくてよいのだ。ちょっとしたいたずらのような一言で壊れゆく微妙な関係の危うさを持ち合わせているところもよい。正しいか間違っているかなどとは関係なく。この短い短編の中に描かれている些細だけれど強く、あたりまえだけれど普段は忘れているようなそういうことが心に響いているような…そんな気がするお話である。

 他にも楽しく読める短編ぞろい。9つの短編がそれぞれの色を放っていて、もっともっとと長い小説が読みたくなってしまう。すーっと、さらりと読み終えてしまうのがもったいないくらいに。そして、この本のテーマである“恋愛”をしたくてうずうずする高ぶった思いをひしひしと感じたりして。自分がまだ若いことに、まだ未熟なことに気づくのだった。

4396331223LOVERS―恋愛アンソロジー (祥伝社文庫)
安達 千夏
祥伝社 2003-08

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