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2005.04.28

君へ。

2005424_020 伝えたいことがあるというのに、どうして言葉はうまく出てこないのだろう。私の口から出てくるのは、どこか何かが足りない。思い浮かぶことを全て並べてみたところで、言いたいことの半分も伝えきれない。それ程に私の言葉は拙くて虚しい。そんなことを気が付けばよく思っている。答えがあるようなないような、そういうことでうじうじ悩んでついうずくまっている。

 ダ・ヴィンチ編集部編『君へ。』(ダ・ヴィンチブックス)は、人が人に伝えたいという切実な気持ちを綴った1冊である。「コミュニケーション」をテーマに、便利なデジタル社会になっても変わらないものについてのエピソードを37人の名作家たちが披露している。37人37様に。味わい深く。豪華な競演として読んでみると、好きな作家さんをついついひいき目でみてしまうのであるが。

 作家陣の顔ぶれは、川上弘美、角田光代、北村薫、山川健一、宮本輝、江國香織、山本文緒、鷺沢萠、鈴木光司、馳星周…他(人数が多いので、私の好きな作家ばかりを挙げてみた)。何とも豪華な顔ぶれで、得をした気分になれる。1冊でこの内容の濃さなんだもの。短い文章の中にも作家の個性が見え隠れして、あぁ、うんうんそうそうこの人の書き方はこうだったよなぁなんて頷いたり思ったり。

 中でも印象深く心に残ったのは鷺沢萠さんの「What if……」である。10年近く前の<超>遠距離恋愛のお話。携帯もパソコンもまだ一部の人の物であった頃のことだ。ただ会いたいというだけで前日に思い立ち空路14時間もかけて会いに行ったり、時差10時間のところでも毎日のようにお互いに電話をし合ったり。そんな中でも訪れるある意味究極な言葉での唐突な別れ…

 その別れの後に思う言葉がいい。“ひとは歩くのをやめない。話すのをやめない。伝えたい気持ちをあきらめられない”それは、当たり前なことなのにとても素敵なことである。人は知らず知らずのうちに確実に成長していて、ふと気づけばその歩みは進んでいるのだ。そして、その光景を見て感嘆の言葉をもらす私。私から出る言葉が拙くても虚しくても、人は動いている。日々成長を遂げている。私が動かなくても周囲は動く。ときには残酷なまでにずっと先を行く。私は自分のペースでゆっくり1歩1歩を踏み出すしかないようだ。

4840110557君へ。―つたえたい気持ち三十七話 (ダ・ヴィンチブックス)
ダ・ヴィンチ編集部
メディアファクトリー 2004-03

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≪ダ・ヴィンチブックスの本に関する記事≫
  『秘密。』(2005-03-28)

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コメント

>私は自分のペースでゆっくり1歩1歩を踏み出すしかないようだ。

う~ん。難しいところですけどね。
でも、他人と自分を比較しても仕方ないっていうのはあるかも知れません。
今の自分を受け入れて、そこから出発するというのか・・・。そうは言っても、自分をありのままに受け入れることも、実際は難しいことだと思います。特に若いときは。
自分は自分の人生を歩むしかないんですよね。

投稿: デミアン | 2005.04.30 18:08

デミアンさん、コメントありがとうございます。
“自分は自分の人生を歩むしかない”って、その通りだと思います。つい人と比べてしまうのが、いけないところだなぁと感じているんですが…なかなか思うようにはいきませんね。足りないところばかりが目についてしまって。
ありのままの自分を好きになれたら、見えるものも違ってくるのかなぁと。そんなことを思います。

投稿: ましろ(デミアンさんへ) | 2005.04.30 18:54

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