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2005.04.07

おめでとう

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 せつないような、おかしいような、心に染み入る12の短編がつまった川上弘美著『おめでとう』を読んだ。12のお話はどれもバラエティに富んでいるが、シンプルですっと入り込めるようなストーリー展開。読み手の心をしっかりつかんで離さないほどの強い力も持ち合わせている。読み始めたら止まらない。

 表題作「おめでとう」では、何気ない言葉遣いがとてもよい。西暦3000年の人類に向けて紡がれた文章には、あなたへの思いしか書かれていないのに、その世界を広く感じてしまうのはなぜだろう…。“寒いです。こんにちは。あなたに会えました。あなたに会うのがすきです。あなたと喋るのがすきです”決して難しい言葉は使わずに、真っ直ぐな気持ちを表現しているこういう文章がひどく懐かしいような気がする。“寒いです。おめでとう。あなたがすきです。つぎに会えるのは、いつでしょうか”何とも素直で素敵な言葉である。

 「いまだ覚めず」では、タマヨさんとあたしの奇妙な関係とやり取りがおもしろかった。相手が次にどんな反応を示すか…ということを楽しんでいるような二人。親密なのかよそよそしいのか、よくわからなくなってしまう。そんな妙な関係を表現しているのか、擬声語の使われ方が特別おもしろい。“結構な悪たれ口をタマヨさんにはっしはっしとなげつけていたように思ってきたのだが…”“ほら、ふくふくしてて気持ちいい”“タマヨさんの前でわあわあ泣きたかった”“タマヨさんは蛸をむつむつ噛んだ”「はっしはっし」、「ふくふく」、「わあわあ」、「むつむつ」、私は普段このような言葉の使い方をしていないので、ほうほうほう、マネしてどこかで使ってみようかなぁと思ったのだった。

 部屋にこもってばかりの私は、ざっと本に目を通して春風に長い髪を揺らされていると、外の世界との交わりの少なさを感じてしまう。私の大切な貴方は今どこで何をしているのでしょうか。私は春風に吹かれながらこのまま眠りの世界へ逝ってしまいたい…そんな気持ちがふつふつと沸いてくるのである。こんな気持ちが抱えきれないまま、うじうじしてしまう私…。這い上がれ、自分よ!ダメダメなときもある。だってそれは、“人間だもの”ということで今日のところはおしまいである。

4101292329おめでとう (新潮文庫)
川上 弘美
新潮社 2003-06

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コメント

ましろさん、こんばんは♪

今、川上さんの『溺レる』を読んでいて、「くいくい」という言葉がとても気に入ってます。

『おめでとう』の擬声語もそうでしょうけど、きっと日本語以外に翻訳するのはむずかしいでしょうね。
っていうか訳せんだろうな・・。間違いなく翻訳者は頭を抱えることでしょうw

あ、ましろさんのPOQUE、やっぱり絵になりますね~。
しばらくキュートなにゃんこをじ~~っと見入っておりました(^^

投稿: Kazuma | 2005.04.09 00:35

Kazumaさん、コメントありがとうございます。
ちょうど、私も『溺レる』を読み始めたところですよー。一緒ですね♪
川上さんならではの表現なのか、普段は会話の中にでてこないのだけれど、
言葉の響きでこんな感じなのではないかしら…って何となくわかる。
そういう気持ちがもどかしいような、ちょっとはにかんでいるような…なので好きです。

そうそう、POQUEはかなり悪戦苦闘して設置しました。画像の取り込みが上手くできずに、仮の状態をキープ中なのです。1ページ目に表示してある画像しか表示出来ないようで、20ページも表示している状態です。POQUEを設置した意味があるのか…うーん…

投稿: ましろ( Kazumaさんへ) | 2005.04.09 01:15

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