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2005.03.04

処方箋

 第23回野間文芸新人賞のどうやら傑作らしい清水博子著『処方箋』。帯に書いてあるとおり、困難な物語であった。現在の時代に漂う恋人達に救済の処方が、果たして本当にあるのか…そんなテーマのお話なのだと勘違いしたまま、読んでしまった。

 総合病院で事務職をしている沖村は、友人の片山から彼の「おねえさん」の病院の附き添い役を頼まれる。片山は社会人として外国へ留学するのだった。両親には姉の病状を詳しく伝えていないで、ひっそりと守ってきた生活を乱されたくない事情を抱えていた。多額な謝礼にも惹かれて、承諾したのだった。精神を病んでいるおねえさん。けれど、「おねえさん」と会うたびに体調が悪くなってゆく沖村。死んでしまうのではないかという不安や恐怖に突然襲われて身体に症状が出現するパニック・ディスオーダーに陥ったのは、病気のはずのおねえさんではなく沖村のほうだった。介護する側ほうが介護されていた。いつのまにか立場が逆転してしまう。

 あなたって、男女かかわらず、みためはひよわだけれど病気はしないくわせものが好きなんでしょう?そんなことを沖村は彼女から言われてしまう。彼女の見解は新しい症状の名前が増えるたびに、言葉につられて症状を発するのではないか…というものだった。症状が先ではなく、言葉が先にある。名付けられなければ症状はあらわれないのかもしれないと。

 しばらくして、片山が留学を終えて帰国する。一緒に暮らす彼女がおかしくなってきたのは、それからである。化粧する手が震え、輪郭が歪んだ彼女。内科的な異常はなく、精神科にかかることをススメられた。彼女は薬が効き始めて、不意にがさごそ動き回ることはなくなり、落ち着いてきた。けれど、娘が精神病だと知った親は、家系に問題があるのではないかとひるむか、現代病の一種としてつきはなすかのどちらかであることが想像できた。どちらの態度をとられても、治療には全く意味がないから、話しても仕方ないと彼女は考えていた。

 そして、彼女は沖村の前からなぜか消えてしまう。最後まで読んでも、理由や彼女の気持ちを理解するのはムツカシイ。もしかしたら、片山もおねえさんも彼女も、存在していなかったとも考えられる。全てが沖村の妄想だったのかもしれないなどと考えてしまう。

 単純な人間関係なのに、登場人物は少ないのに…ものすごく読みにくかった。多分、再読したらまた違う感想を思い浮かべることが出来るのだろうか。正直、小説の持つ雰囲気との相性が悪かったらしいと思う。だから読んでいてもしんどかったのだけれど…うーん、男性の視線で書かれているからなのでしょうか?それとも、誰に焦点をを当てて文章が書かれているのかがわかりにくかったからなのか?

4087477916処方箋 (集英社文庫)
清水 博子
集英社 2005-02

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