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2005.03.20

ロマンス小説の七日間

 少し前に読んだ三浦しをんのデビュー作である『格闘する者に○』が予想外におもしろかったので、同著の『ロマンス小説の七日間』を読んでみた。もしや秋葉系か?と想像してしまった表紙とは異なり、内容はちょっぴりせつない恋愛モノとなっている。あれっ?恋愛モノ…でいいのだろうか。いいんだよねぇ(って、誰に訊いているのやら…)。いや、恋愛モノじゃないような気もする。でも、読み終えて女性なら胸がキュンとなるのは確かだから、恋愛モノだろう。そうとは限らないか…人それぞれ感じ方は違うのだから。あとがきにも微妙な作者の言葉があるのでかなり紛らわしい。歴史モノでも恋愛モノでもない、ジャンル分けなどという枠組みは不要だとも書いてあるのに、「恋愛小説を」という依頼を受けたらしい。カバーには、新感覚恋愛小説とある。初めて聞くこの7文字の言葉…うん、なるほどと頷くしかない。

 海外のロマンス小説の翻訳が仕事である28歳のあかり、半同棲中の恋人である神名(かんな)。2人を中心とした物語とあかりの翻訳する中世の騎士と女領主の歯の浮くような物語が7日間続く。あかりは、周囲の動きや言動に影響されまくり、自分の翻訳する小説に気持ちをぶつけてしまう。小説の登場人物たちは、あかりの気の向くままにどんどん暴走し始め、原作を離れてゆく。もう、ほとんどがあかりの創作である。現実は小説に、小説は現実に、2つの物語が互いに影響し合い、とんでもない展開になってゆく。最後までどうなるかわからない。暴走っぷりが、何ともおもしろい。自分の書いた小説につっこんだり、「あぁ、やちゃったよ」とか「この女はなんなんだ」みたいに無責任だったりするのもいいのだ。

 あかりは、ロマンス小説に対して、否定的な意見を持ちながらも、何だかんだ言ってロマンス小説風の恋愛に憧れているような、そのものであるような…「耐えて耐えて愛を育む」というパターンにうっとりしちゃう心があったり、ツッコミを入れながら読む楽しみがあったりする。うっとりとツッコミの絶妙な塩梅(あんばい)が、やみつきになっているのだった。ヒストリカル・ロマンスの基本的におしとやかでおとなしい、やや主体性に欠けたお姫様の恋を、どうして現代の女性たちが応援するのかと。自分勝手でワガママな主人公には、実際にはお近づきにはなりたくないタイプだと思っているのだった。

 登場人物は皆かなり個性的で、妙に人間臭い気がする。あかりの言動や行動はもちろん、神名の不可解な言動や行動もアリに思えるのは世の中のせいだろうか。どこにも居場所のないところとか、誰にも本来の姿を見せていないようなところとか、人当たりだけは器用なところとか、あぁいるよなぁと思うのだ。神名は、あかりの父親に自分の父親を重ねて、これをしたら怒るだろうか、こう言ったら照れるだろうか、とあれこれ反応を試しては、「父親とはこういうものか」と知って無邪気に喜んでいる。そんな神名をやはりさみしいのだろうかと思うあかり。あかりの父の頑固さ、よく行くお店の人たちの陽気さ、あかりの友だちの呑気さ、どれもこれもおもしろいのだ。

 もう、三浦しをん様に間違いなく完全にはまってしまった。

4043736010ロマンス小説の七日間 (角川文庫)
三浦 しをん
角川書店 2003-11

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