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2005.03.01

パンプルムース!

 文・江國香織、絵・いわさきちひろの『パンプルムース!』(講談社)を衝動買いしてしまった。「さあ あたらしい せかいの まえ」という帯の文字。大好きないわさきちひろの水彩画とひらがなばかりの絶妙な江國香織の詩が、しっくりぴったりで、まるではじめからこの絵とこの文が一緒にこの世に生まれたみたいな印象を受けた。タイトルの不思議な響きにも惹かれた。“パンプルムース”とは、フランス語で“グレープフルーツ”のことなのだとか。

 私がいわさきちひろの絵と出会ったのは病院だった。小児科病棟の待合室にいわさきちひろの絵が診察室の前にずらりと並んでいたのだった。本格的に好きになったのは、だいぶ後のことである。中学時代に愛読していた『文庫ギャラリー ちひろ・紫のメッセージ』の中でも一番大好きだった1971年に描かれた「傘をさした少女」というタイトルの絵が江國さんの「あたしのおおきさぶん」という詩とともに収録されていた。世阿弥の幽玄に通じる世界を限りなく薄い桃色と藤色などで描かれたその絵は、少女のまっすぐなつぶらな目と微笑みを印象づけるように、少女の顔と傘と手を白で描かれている。そして、紫の世界の中に一点の黄色。不思議な魅力を持った絵なのである。

 あたしのおおきさぶん

 かさはおもいけど へいき
 かたによりかからせて もつの
 あめはつめたいけど へいき
 どんなにふっても
 あたしのうえには
 あたしのおおきさぶんちょうどぴったり
 しか ふらない
 かぜがふくと
 あめがかおにあたるけど へいき
 あたしのおおきさぶん
 ちょうどぴったり
 だから うけとめるの     
 
 『パンプルムース!』より抜粋。

 何だか乙女心をくすぐる詩。自分の大きさのぶんだけっていうのが、少し孤独な印象を私はもってしまったのだけれど、孤高に懸命に生きる少女を想像してしまった。「へいき」という言葉には、ちょっと強情な気の強さも感じてしまったり…。そして、一番この本の中で好きだと思ったのは、「おともだち」という詩である。お互いに老いても友だちでいられたなら、しわしわの手をつないでおそろいの水着や浮き輪で泳ぎましょうよ。という内容のものである。“しわしわの手”というのが何ともいい雰囲気で、亡くなった祖父と祖母を思い出した。いつまでも仲良し…そんな人間関係を築きたいと思った。

4062128098パンプルムース!
いわさきちひろ
講談社 2005-02-24

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コメント

はじめまして。
グーグルの検索で「パンプルムース」で
とんで来ました。
わたしのブログ名も「パンプルムース」です。
もちろんこの本が好きで!
内容は日常のくだらないことや息子自慢なのですが、トラックバックさせていただいてもいいですか?またのぞきに来ますねー。

投稿: ひじりん | 2005.11.03 16:46

ひじりんさん、はじめまして。コメントありがとうございます!
“パンプルムース”というブログをやってらっしゃるのですね。
とっても素敵です!
“息子自慢”、“日常のくだらないこと”。
ますますとっても素敵です!
息子さんのコト、いっぱい自慢してください。
トラックバックは、いつでも歓迎しておりますので、ぜひどうぞ。
本についてのことばかりなので、なかなかしづらいかと思いますが。
私も遊びに行かせていただきます。今後も宜しくお願い致します。

投稿: ましろ(ひじりんさんへ) | 2005.11.03 17:09

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