« 第七官界彷徨 | トップページ | そして私は一人になった »

2005.03.30

いじめの時間

Tokitoki16 「いじめ」をテーマに描かれた7人の女性作家による短編集『いじめの時間』を読んだ。「いじめられる側」と「いじめる側」の間に横たわる暗く深い闇。様々な「いじめ」に翻弄され、心が傷つき、魂が壊れることもある。乗り越えていくこともある。希望の光に導かれることもある。江國香織、大岡玲、角田光代、野中柊、湯本香樹実、柳美里、稲葉真弓という豪華な顔ぶれによる7人7色による物語は、どれも痛くてせつない。そして、きゅんとなる。

 「いじめ」はあらゆるところで発生する。伝染する。あっという間に。人間の世界を超えてしまうほどの残酷さを持ち合わせ、あちこちで燻りを秘めていく。理由など関係ない。たまたま関わってしまっただけかもしれない。知らぬ間に行動していたのかもしれない。必然性があったのかもしれない。気がつけば自分がいた場所。それが「いじめられる側」だったのか、それとも「いじめる側」だったのか…ただそれだけのこと。大人の社会でも子供の社会でも、それは変わらない。そんなふうに思う。

 両者の他に「傍観者」がいることも忘れてはいけない。強い方に見方しながらも、見て見ぬ振りをする冷たい心を持つ彼らの存在が、「いじめ」を左右する。陰湿さや残酷さは、彼らのさじ加減で決まってしまう。ある意味、一番狡くて残酷な存在ではないかと思ってしまう。あまりの身の軽さに、逃げ足の速さに、気持ちの展開の方法に驚くばかりである。自分の存在がどれほど人を傷つけているか、彼らの多くはそれに気づかない。思ってもいない。人を傷つけているなんて。

 柳美里さんの『潮合い』は、特に「いじめる側」と「いじめられる側」の心の闇や孤独について描かれているような気がした。自分がどちらの立場になってしまうのかわからない両者。一歩間違えれば、「いじめる側」も「いじめられる側」になり得る。自分の一言で教室の雰囲気は変わってしまう。変えることができてしまう。それを自覚しているクラスのリーダー格の少女。彼女は、転校生の中の自分の気に入らないところを探す。探し出して、わざとらしく振る舞う。クラスの雰囲気に合わなければ、変えることが当然だとか…周囲は、新しいルールの前に必死に自分の足場を固めておくのである。けれど、結局辿り着くのは、孤独感である。

4101339619いじめの時間 (新潮文庫)
江国 香織
新潮社 2005-03

by G-Tools
  もしもお気に召しましたら人気blogランキングへ…

|

« 第七官界彷徨 | トップページ | そして私は一人になった »

74 その他の本」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

ましろ様、お久し振りです!岡枝です♪
ましろ様のログ、以前よりも更に読み応えと深さが増して来られて、本当に面白い…って言葉は軽過ぎますけど、楽しみにしています。残念ながら、私の読書量はその愚鈍な速度に比例して大変少なく、ましろ様が御感想を書かれている書籍のほとんどを読んでさえいないのですが…

ですが、ましろ様のログを読ませて頂きますだけで、そのエッセンスが確実に伝わって来て、まるで実際にその本を読んだ気になってしまいます♪

さて、今回の『いじめの時間』も未読なのですが…是非、今度(って、何時になるかは不明ですが)読もうと思いました。

私自身も苛められ、極たまにですが苛めることもあり、概ね苛めの傍観者ではなかったかと自分の半生を振り返ってみました。私が小中高生の頃は、まだ‘イジメ’という言葉はありませんでしたが…苛められていた子は確かにいましたもの。

私は小学校の頃は帰国子女学級という、某有名国立小学校の特殊学級におりました。その名の通り、親の仕事の関係で海外で数年間を過ごしましては、日本でのお勉強が大幅に遅れていた児童ばかりを集めました特殊クラスです。私達は十数名しかいなくて、とても仲の良いクラスでした。けれども、その小学校には勿論普通のお子様達がいらっしゃる一般学級もありまして、そうした普通のクラスのお子様方から、私達は‘知能遅れ!’や‘ガイジン!’と蔑まれておりました。私は彼らを憎みました。今でも彼らは嫌いです。

一般学級の彼らはそのままその有名国立小学校から附属の中学校へと進学して行きました。私達帰国子女学級からも成績が優秀でありました3名ばかりは同じ中学へと進まれました。私はその一人ではありません。けれども、後日その3名のうちの一人と会います機会が中学の頃にありまして…彼女の話を聞いてびっくり!中学に上りまして、帰国子女学級という恰好のイジメの対象が無くなってしまいました途端、一般学級の女子は大きく二派の派閥に分かれて、冷戦を繰り広げなさっていらっしゃるとか!しかも、その二派のどちらにも属さない者を、文字通り‘イジメ’まくっては、遂に二名がそれに耐え兼ねて転校する破目に。その話をしてくれた私の帰国子女学級出身の友達も、派閥に属さない為に日々イジメを受けていたのです…

何だか、ダラダラと昔話してしまいまして、ごめんなさい。でも、『いじめの時間』についてのましろ様のログを読んでおりましたら、その頃のことが鮮明に想い出されてしまって…ちなみに、その某有名国立小学校とは、かのお茶の水女子大学附属小学校のことです。一般学級にいたイジメっ子達は、実は同じく附属の幼稚園から厳しい‘お受験’競争をくぐり抜けて選りすぐられました、エリートお子様達ばかりなのが、皮肉でしょ?ちなみに、彼らの親同士の間でもイジメがあったりしました。イジメっ子の親は大概、同じくイジメっ子お母様でした。

イジメをしていいものと思い込んでいる子供達は、或いは自分達の親を見てそう思うに至られた場合が多いのかも知れませんね…最低ですよね。

ちなみに、最近私は自分のログのコメント欄でイジメられちゃってます♪でも、ここは一つ根性入れて、軽くあしらいつつも反撃なぞしています。私はひ弱で軟弱ですが、苛められませば確と‘怒り’は抱けますもので♪

では、ましろ様…お身体にお気をつけて、今後もましろ節なりますログをじゃんじゃん書いてくださいね!貴方様のログを読みます度に、私は‘強さ’を頂いているような気がします。ましろ様は強くて、美しいお方様ですよ♪

投稿: 岡枝佳葉 | 2005.04.02 17:15

岡枝さん、コメントありがとうございます。
楽しみに読んでいただけて、とても嬉しく思っております。“強くて、美しいお方様ですよ♪”だなんて…光栄です。岡枝さんが御自身のログのコメント欄でイジメられているというのが、かなり気になりますが…大丈夫なのでしょうか?

“ログを読ませて頂きますだけで、そのエッセンスが確実に伝わって来て、まるで実際にその本を読んだ気になってしまいます♪”という言葉も嬉しくて。あれっ?もしかしてかなりのネタバレ記事を書いているせいかしら?と反省しつつ。

岡枝さんは、様々な出来事を経験されてきているのですね。おぉ、帰国子女だったのですか。しかも、お茶の水っ!!!かつて私が文通していた友人がいまして、やっぱり帰国子女でお茶の水でした。途中、あまりにもイジメがひどかった様子で転校したのです。その後連絡が途絶えてしまって現在に至っています。岡枝さんのコメントを読んでびっくりしてしまいました。

私自身もイジメられた経験があるもので、過去の出来事と本の内容とが、かなりシンクロしてしまうのですが、いくら歳月が経っても悲しい記憶や苦しかった思いは消えずに残っているものですよね。子供社会だけでなく大人社会にも深く根付いている「イジメ」がなくなる日を信じて…

投稿: ましろ(岡枝さんへ) | 2005.04.03 17:48

ましろ様、こんばんは!岡枝で~す!

‘御自身のログのコメント欄でイジメられているというのが、かなり気になりますが…大丈夫なのでしょうか?’

↑すみません。ちょっと、オーバーでしたね。軽い‘アラシ’に合ってしまったり、またまたTBの仕方云々について御叱責いただいてしまったり、とそんな程度です。御心配なく…でも、さすがは自律神経失調症だけあって、少し凹みましたけどね。でも、ほんの少し!

‘かつて私が文通していた友人がいまして、やっぱり帰国子女でお茶の水でした。途中、あまりにもイジメがひどかった様子で転校したのです。’

↑スゴイ、びっくり!私の代ではイジメが酷くて転校した子はいなかったので、別の学年でしたかと想われますが…或いは中学か高校でお茶の水に行っていらしたのかな?何れにしましても…実は、国立校の多い文京区内でもお茶の水附属のお子様は当時から群を抜いて評判が悪かったのです。態度が高飛車で、ホームレスの人を苛めた連中まで小学校におりました。その連中は男子でしたが、私達帰国子女学級イジメに関しては先頭を切っていらした輩でもありました。それにしても、文通されていたお友達…可哀想ですね。さぞ辛かったのでしょう。でも、きっと転校して良かったってその後は思えたのではないかしら?

‘私自身もイジメられた経験があるもので、過去の出来事と本の内容とが、かなりシンクロしてしまうのですが、いくら歳月が経っても悲しい記憶や苦しかった思いは消えずに残っているものですよね。子供社会だけでなく大人社会にも深く根付いている「イジメ」がなくなる日を信じて…’

↑イジメ…本当に嫌ですよね。やられた方は忘れたくても、忘れられない。私は学校では人をイジメたことはありません。けれども、大人になりましてから自分のストレスを知り合いに向けてしまったことが一度だけありまして、集団で何した訳でも無いのですが、その時の自分の行為はイジメだったような気がします。

我家のニャンコロ達は普段は仲良しなのですが、お腹が空いていてもなかなか私がゴハンを差し上げませんと、イライラして他の猫に当たり散らす子が二名ほどおります。その様子を見ます度に、私はイジメの根源を目の当たりにしているように思えてなりません。

自分のストレスを他人に向けることで発散させる…誠に情け無い行為ですよね。二度とされたくないし、自分もしたくない。でも、またされちゃったら、子供の頃よりは上手くあしらえる術を少しずつでも身につけて、精神力をちょびっとはアップさせたいと思っています。

ましろ様も私もお互いの病のせいで、自分は弱いなって思いがちかも知れません。少なくとも私はそうです。けれども、そういう体験をしています故に意外と打たれ強いかも?って、凹んでも少しは立ち直りが早くなりました己を誉めてやっています。

ちなみに、イジメがテーマの御本では重松清様の『ナイフ』がオススメです。でも、重松清様の最高傑作は『疾走』だと思うけど…もし、御気分が向かれて読まれましたら、是非御感想をログにアップしてくださいね。では、また!長文御免♪

投稿: 岡枝佳葉 | 2005.04.04 02:32

岡枝さん、再びコメントくださってありがとうございます!
コメント後、気になってブログを拝見させて頂きました。記事に私の名前がまた出ていてびっくりしました。トラックバックはムツカシイですよね…

岡枝さんの猫ちゃんたちもケンカするのですね。たくさん飼ってらっしゃるみたいなので、どうやっているのかしらと思っていました。うちは3匹なのに、離してかっているもので。まさにイジメの根源です。猫たちの会話が聞けるものなら聞いてみたいものですが、結構残酷なことを言っているかもしれませんね。

日々、いろんなことがあって落ち込むこともありますが、私も精神力ちょびっとアップさせたいです。それから、本も紹介していただいて、ありがとうございます。その本は確か、夏の100冊の中にありましたよね。タイトルと内容は知っていますが未読なので、機会があったら読みたいと思います。

投稿: ましろ(岡枝さんへ) | 2005.04.04 17:11

ましろ様、ごめんね。勝手にお名前を出してしまって…TBとかコメントでお知らせすべきが迷ったんですけど…TBするには内容が該当するログがましろ様のところには無いし、こっちでゴタゴタしている問題についてこちらのコメント欄に記述するのも何かどうかな?って思って…ましろ様もそうだと思いますが、私はネットの‘ルール’とかについて議論する為にログをやっているわけじゃないので、兎に角、早く一区切り着いてくれ!って気持でいて、今後はもうTBについて云々なるログは書きません!

でも、今回の一件で私はつくづくましろ様は堂々としていたよなぁ!と、過去を振り返ってしまいました。ましろ様は御自身が不快な想いをされたと堂々と私に伝えてくれました。私が反論ログを書いたのに対しても、御自身の姿勢を変えずに堂々と再度コメントしてくださいました。私は、そんなましろ様のことを凄く気持のイイ人だと実感したものです。それに比べて今回は、ちょっち雰囲気が違うのが残念でした。

ああ、でもこんなことに煩わされずに面白い本読んで、楽しくログを書いていこう!議論するなら、書いた内容について議論しよう!

お名前を勝手に出させて頂いてしまったことへのお詫びのつもりが、長くなっちゃいました。すみません。ではでは、また遊びに来ますね♪

追伸:でも、ましろ様宅のニャンコロ様達って何時も仲良く写真にツーショットとかで写ってますよね?それでも、イジメはあるのか…って、ウチの連中も同じようなもんか?寒い時とか甘えたい時はお互いベタベタしてるのに、腹へってイライラするとバトル開始!でも、イライラが治まればすぐに仲良しに…人間同士もそうありたいねぇ!

投稿: 岡枝佳葉 | 2005.04.05 01:44

またまた、コメントくださって嬉しく思っております。
お詫びなんていいのですよ…催促したようで、すみません。一区切り着くとよいですね。楽しく気持ちよく交流できるといいのですが、いろんなことがあったり、いろんな人がいたりしますから大変ですよね。

ツーショットで写っている猫2匹は、ケンカなんてしょっちゅうですよ。こうしている間にもお互いのお腹を蹴り合ったり、猫パンチし合ったりしてますから。今日は黒猫・トキワの方が体制がが優勢の様子です。

投稿: ましろ( 岡枝さんへ) | 2005.04.05 11:32

ましろさん、こんにちは。TBありがとうございます。こちらからもさせていただきました。
猫がたくさんのかわいくてシンプルなサイトですね(^^)
同じ本好き同士、これからもよろしくお願いします♪

投稿: sonatine | 2005.04.25 10:12

sonatineさん、こんばんは。
コメント&トラックバック、ありがとうございます。
sonatineさんのブログは、タイトルも素敵ですし、ねこの温度計が可愛くていいなぁと思っております。
もちろん、文章も読みやすくて好きです。
これからも、ちょくちょくお邪魔しにいきたいなぁと思っております!

投稿: ましろ(sonatineさんへ) | 2005.04.25 22:55

ましろさん、はじめまして。「いじめの時間」で検索してこちらにたどり着きました。
2年半も前の記事なので、既にお気付きだったらお節介なのですが、このアンソロジーの執筆者の一人である大岡玲さんは下のサイトの写真を見る限り男性のようです。
http://www.radiodays.jp/artist/show/76
いや、ひょっとしたら女性かもしれませんが(笑)。
「玲」という名前は確かに女性っぽいですが、どうやら「あきら」と読むようです。

投稿: たま | 2007.10.08 02:55

たまさん、はじめまして。コメントありがとうございます!
大岡玲さん、男性の方だったのですね。
記事ではほとんど触れなかったので、あまり印象に残っていなかったのですが、
たまさんのコメントでふわぁっと思い出しました。
「玲」という漢字には、いろいろ読み方があるのですね。
素敵な名前です★
どうぞ今後もよろしくお願い致します。

投稿: ましろ(たまさんへ) | 2007.10.08 04:36

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55029/3490940

この記事へのトラックバック一覧です: いじめの時間:

» いじめの時間 [寝ていられるのになぜ起きる?]
いじめの時間江国 香織 大岡 玲 角田 光代 野中 柊新潮社 2005-03売り上げランキング : 3,697おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools最近、オムニバス形式の本が好きです。sonatineは本を勢いで一気に読みたいので、短編がすきです。さてさていじめの時間重いですねー。タイトルか... [続きを読む]

受信: 2005.04.25 10:04

» ON AIR♯50 〜のびた身長文庫 「いじめの時間」〜 [BLOG RADIO〜のび太のラジオコンタクト〜]
今日は前期最後の通常部会に参加してきました。なんかホントに早い三ヵ月だったなぁ。こんなに早いのは初めて。とにかく、早かった。これからどんどん時は過ぎていくのだろう。少し寂しい。でも、不思議と哀しくはない。今の部に入ったことは間違いではありませんでした。先輩、同... [続きを読む]

受信: 2005.07.12 20:34

« 第七官界彷徨 | トップページ | そして私は一人になった »