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2005.02.12

空のオルゴール

 中島らも氏の遺作となる長編小説『空のオルゴール』を読んだ。笑えてせつなくてほろりとくるストーリー展開。最後のオチまで、計算され尽くしているような気もするが、らもワールド全開である。教授の気まぐれから、パリでロベール・ウーダンという19世紀の奇術師について調べることになったトキトモ。“近代奇術の父”と呼ばれ、晩年には植民地に赴いて、奇術を使って暴動を鎮圧したとも言われている。パリに来たものの、ロベール・ウーダンの資料がほとんど見つからない。そんな時、1年後輩のリカと再会し、リカの紹介でフランス人一の奇術師・フランソワと会い、ロベール・ウーダンについて話を聞ける機会に恵まれるのだった。

 そして、フランソワ師を囲む弟子たちのパーティーにトキトモも参加。カリオストロ、マミー、フーディーニ、オキトと出会う。けれど、時間に厳しい師匠がこんなにまで遅れることなどないということで、リカとトキトモが心配になってフランソワ師のアパルトマンに着くと、変わり果てた姿となっていた…棺のような箱の中で、身体を三等分されていた。そして血の海…

 『魔術師どもに告ぐ。きさまらのやっていることは神の摂理に背くこと。悪魔の仕業。無知な人民をだまして大金を吸い上げる詐欺師の手口。我々は許さないだろう。きさまらの最後の一人が倒されるまで。 
                      アンチ・マジック・アソシエイション U.M.A』

 フランソワの弟子たちは狂言的ファンダメンタリストの仕業ではないかと考える。ファンンダメンタリストは、キリスト教の一派であり、聖書に書かれていることは実際に起こったことだと主張する一団である。彼らからみれば、自分たち奇術師は悪魔の申し子となる。フランソワ師の葬儀後より、リカのアパルトマンで危機を避けるために一団として行動するようになる。

 一方、U.M.Pを名乗るのは、4人のメンバーからなる。青龍という大男、居合い抜きの達人白虎、爆薬のプロフェッショナルの玄武。44マグナムを使う女性スナイパー朱雀。人を殺すことに快楽を覚えているような一団である。フランソワの弟子たちは仇をを討つために、横の連絡を取り合っていることも承知の上…身を潜めながらも、人混みに紛れる。カリオストロは、天才的な投げナイフの名手だが、アルコール依存症。フーディーニは箱抜けの名人。どんな錠前もあっというまに開けられてしまう。マミーはミイラ男で、消失マジックを得意とする。リカは空中浮揚で、日本の武術のナギタナの心得もある。最近彼女の周りをウロウロするトキトモ。彼は合気道の心得がある。オキトという自称東洋人は、自分の意志のままに風船を操ることができる。

 U.M.Pは確実に一人ずつ殺しを進める。単独行動を禁止したにもかかわらず、ひょっこりと出かけてしまうフランソワ師の弟子たち。そもそも、大の大人がいつも団体行動など、我慢できるはずがないのだ。しかも、リカ以外は男性。遠い田舎の地に家族がいる者もいるのだ。その隙をうかがって近づく魔の手。警察をあまり信用していない弟子たちは、あちこちを旅しながら追っ手から逃れようとする。時には、自らを守るために闘う。

 そして、最後のオチは何とも最高である。えっーーー!!!人がたくさん死んでいるのですよ。いいのですか?ある意味戦争ですよ。このお話、もしかして悪ふざけですか?教授、あなたは出番は少ないが強烈な印象を読者に与えましたよ。あぁ、やられちゃった1冊である。らもさん、遺作は傑作ですよ。

4101166412空のオルゴール (新潮文庫)
中島 らも
新潮社 2005-01

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