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2005.02.20

Lyrical Murderer

 前作「Apri*kiss」に続いて、今回も全部メール形式で書かれた桜井亜美著『Lyrical Murderer』。札幌で写真館を営む父親のもとに衣莉亜という少女が写真を撮りに訪れたのだが、1年経っても写真をとりにこなかった。ダイチは、写真の少女に一目惚れをし、忘れられないまま東京で暮らしていた。ある日、出会い系の宣伝メールの中にイリア(衣莉亜)という17歳の少女の名を見つける。漢字も同じ同名の少女に、一目惚れした写真の少女の面影を感じて、メールを返すダイチ。

 写真の少女とは別人であるとイリアは言い、オープンに自分のことをメールに書いてくるその世界は、手が届かないほど明るくて、キラキラ輝いて、何の迷いもためらいも感じられない羨ましいものであった。が、次第に、イリアは52歳の男性の愛人であることをうちあけてくる。ダイチに軽蔑されることを覚悟の上で。ダイチはダイチで、企業のパーティーで知り合った女性にお金をもらい相手をしたことをうちあける。さらに深い秘密を隠しながら…全然違う人生を歩んできたのだから、イリアにはイリアの、ダイチにはダイチの淋しさの埋め方があるのだった。

 2人のメールでの交流は深まり、ダイチはイリアに会いたい旨を話す。イリアは、会いたいけれど、がっかりされたくないので待ち合わせの場所で顔が分からないように変装して、本当の自分を隠してお互いにメールだけで話すブラインドゲームをしようともちかける。30分以内に相手の姿が分からなかったらそれまで。直接は話さないが、負けたら2人分おごることを条件に出した。

 ダイチは、孤独な人間だった。こんな孤独なままでずっと死ぬまで生き続けることなどできないと考えていた。イリアは、自分には何か大きなものが欠けていると感じていた。それは、ぎゅっと抱きしめられること。そして、愛されることであった。どこか似た雰囲気を持つ2人であったが、お互いに隠していることがたくさんあった。自分に自信を持っている好きになってもらえるような女の子になりたかったイリア。自分の夢をかなえるのと引き換えに、自分を売っていたダイチ。

 2人は、「自分をリセットして、新しい自分になるために生きる」そう決めて待ち合わせをする。その時間までにお互いの抱える問題をリセットすることを条件に。けれど、ダイチは現れず、イリアはその場限りの嘘の楽しさに逃げ込む日々を送るようになる。ダイチがメールを送れば、送るほど嫌われるような女の子を演じるイリア。大切な人に抱きしめられる本当に幸せな瞬間など、一瞬でしかないと言うイリア。人は変わる。人は忘れる。人は気まぐれ…誰かに愛される希望を持てなくなっていた。心を閉ざして誰も信じない毎日が虚しいと知りながら。

 さて、2人の運命はいかに?

434440601XLyrical murderer (幻冬舎文庫)
桜井 亜美
幻冬舎 2005-02

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