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2005.01.21

対岸の彼女

IMG_0041 先日直木賞を受賞した角田光代著『対岸の彼女』を読んだ。女性ならではの視点で描かれたこの小説の世界は、もしかしたら女性にしか理解できないのではないかもしれない…そんな心配をしてしまった。私は、彼女の小説・エッセイのどれも好きである。しかし、これ程までに小説の世界に生きる登場人物と自分自身を重ねて考えたことがあっただろうか…とふと感じた。

 大人になってからも公園に集まる母親たちとうまく馴染めない公園ジプシーの小夜子。同じ年頃の子供と一緒に遊べない娘のあかり。娘を見ていると、自分を見ているように思ってしまう小夜子の人間関係の下手さが何ともいい。人間っぽいのだ。私もまさにそうだ。そんなことも考えてしまった。

 もの心がついた頃、私は既に気持ちは独りだった。そして、独りきりで遊んでいた。本を読むこと、折り紙を折ること、ピアノを弾くこと…それらが私の時間だった。今思い返してみると、同世代の友達と遊んだという経験が明らかに不足していた。自分が周囲との距離に気づいたのは、7歳だった。

 中学から女子校生活をスタートさせた私であったが、女子校独特の雰囲気には馴染めないまま、6年を過ごした。私はたった一人の理解者がいれば、それでよかった。けれど、多くのクラスメイトは、大勢の友を求めて独りになることを恐れていた。自分の身を守ることに精一杯だったのだろう。私は「対岸の彼女」に出てくる葵の友人のナナコのように、あちこちのグループを行ったり来たりして、いつのまにか何となくクラスの状況を把握していた。

 高校時代、エスカレーター式で進学できた私であったが、仲のよい友達と離ればなれになり、新しくグループに所属することは面倒であったし、そんなことに労力を使うくらいなら独りの世界の方がよっぽど楽なのであった。それは孤独であったが、耐えられない程のことではなかった。自ら選んだものであり、苦痛ではなかった。自由だった。気楽であった。誰もいない屋上で、誰もいない図書室で、私はただ一人になれる場所と本があればよかった。

 大学時代は大学だけの友人、バイト先ではそこでの友人…などと、その場限りの気まぐれな人間関係しか築くことが出来なかった気がする。あいさつ程度の知り合いはたくさんいた。面倒になると、携帯を変えてアドレスを変更した。たったそれだけの関係だったのだなぁ…そう考えてみると悲しくなる。

 「対岸の彼女」の小夜子も葵も人との付き合いが苦手である。お互いに抱えるものや最優先させるものも違う。育ってきた環境も過去の思い出も違う。そんな2人の距離が不思議と縮まる。男性と女性の違い…それは女性が女性を区別するということである。既婚者か未婚者なのか、働いているか働いていなのか、子供がいるのかいないのか、それによって付き合うかどうかを決めている気がする。まだまだ乙女の私も微妙な年齢。大人と呼ばれる身になっても、人間関係はムツカシイものである。

4167672057対岸の彼女 (文春文庫 か 32-5)
角田 光代
文藝春秋 2007-10

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コメント

私も苦手です人付き合い。
でも、人と付き合わなきゃ生きていけないですものね。
角田光代さん作品を読んだ事がないので、これを機に読んでみようと思います。

投稿: ミント | 2005.01.22 22:48

ミントさん、コメントありがとうございます。
人と関わることなくして生きることはできませんよね。生きることが下手な私も、下手なりに日々励んでゆきたいです。角田さんの本は特に女性には読みやすいと思いますので、オススメです。私は、人柄も素敵な方だと思っております。

投稿: ましろ | 2005.01.22 23:01

ましろちゃん、「対岸の彼女」、図書館で借りました。
まだ読んでないのだけど楽しみだよ。
私も角田さんの本ははじめてです。
前々から読みたかったんだけどなかなか本を
読む気力が出なくて。
また読んだら感想を送るね。

投稿: えりこ | 2005.01.23 18:40

えりこさん、コメントありがとう!!
とっても嬉しかったです。体調は回復したのかしら?心配です。無理しないでね。
角田さんの本は力を抜いてリラックスした気持ちで読めると思うよ。本屋さんで「直木賞受賞」の文字の帯を見るたびに自分のコトのようにじーんとしちゃいます。私の持ってるのは2刷りだから書いてないので…受賞しなかったら、文庫になるまで待つつもりでいたんだけれどね。感想、楽しみにしてるね。

投稿: ましろ | 2005.01.23 19:47

トラバありがとうございました。
角田光代の本は今回、はじめてだったのですが、
こんな若手の小説家がいたのだと、うれしくなっているところです。

投稿: etcetra | 2005.01.31 23:21

etcetraさん、コメントありがとうございます。

私は角田さんの作品は、どれも登場人物が人間っぽくて大好きです。どこか不器用で、損な性格で。エッセイは作者のユーモア(天然?)たっぷりで、人柄も好きになるのではないかと思われます。これを機にぜひ読んでみてください。そして、私の角田作品についての過去の記事を参考にして頂ければ、幸いです。

投稿: ましろ | 2005.02.01 10:32

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