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2005.01.13

診療室にきた赤ずきん

 幼いときに心惹かれた物語が、もしかしたら自分の人生を導いてきたかもしれない。人生のおりおりに鍵となったお話があったのかもしれない。人には誰にでも「自分の物語」があるのだと言い切る、大平健著『診療室にきた赤ずきん』。この本を読んで驚くのは、子供の頃に馴染みのあったお伽話や童話が、心の病を治すのに効果をあげてしまうという事実ある。大平先生は、様々な症例の患者に昔の物語を使ってぴたりとうまい具合にオモシロく痛快に導いてくださっている。そして、読み手の心をしっかりつかんで離さない。思わず、全ての言葉にうんうんと納得してしまった。

 様々な物語による治療である物語療法。一番最初に取り上げられている少女の場合は、「ねむりひめ」でスタートする、詳しくは書かないが、見事、彼女の問題は解決した。少女が自分の人生を歩み出す手助けをする。親の出来ることには限りがあり、その限りの地点から、外からやってくる他者の手助けが必要となることを教えてくださった。

 また、人はしばしば自分のことが決められない状況に陥ってしまう。自分で決定した結果、不都合が生じて後悔をすることが怖いのである。また、しばしば人はときに自分が置かれている状況をつかめなくなる。そしてまた、人間だからこそ抱える問題なのであろう。また、親密さを犠牲にしても人との葛藤を避けようとする人が現在は多いらしい。

 精神科医にとっては「原因」追求こそが仕事そのものであると大平先生はおっしゃる。丹念に「原因」を探していると、次第にふっと患者が気づくときが来るのだという。この自分で気づくという点が、医師に教えてもらうのというのでは、まるで違うのだ。一般に、患者は自分の「本当の問題」がわからないから病院へ来る。自分のことを知り過ぎているからこそ、かえって自分にとって一番重要なことが目に見えなくなっているとも考えられるのである。物語とは、精神科医が患者を映し出す<鏡>。そこには、患者の「本当の問題」がきっと映し出されているのだろう。

 そして、何より「自分の物語」を探さなくては…そう思って幼い頃に馴染み深かった物語を探してみる。思い浮かぶのは『やさしいたんぽぽ』と『スーホーの白い馬』くらいである。うーん、どちらも違うような気がする。

4101160813診療室にきた赤ずきん―物語療法の世界 (新潮文庫)
大平 健
新潮社 2004-08

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