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2005.01.11

だれかのいとしいひと

IMG_0015 8つの短編諸説からなる角田光代著『だれかのいとしいひと』は、何とも心がせつなく高なる恋愛を描いている。主人公たちはみんな人間らしくて、とても不器用な生き方しかできない。そして、いい意味でも悪い意味でも自分の感情に正直である。8人それぞれの恋のかたちが描かれているのである。揺れ動き、かき乱される心の表現が豊かであり、思わず感情移入し過ぎてしまった私…いろんなものに影響されまくりである。「私には自分というものがないのか?」と、思わず考え込んでしまった程であった。

 表題作である「だれかのいとしいひと」の主人公は、恋人との関係が近いうちに終わることを何となく数ヶ月前から感じながら、姪っ子をつれて恋人と3人でデートをしている。性格が合わないわけでもなく、相手をどうしても許せないわけでもなく、単純にあきたというわけでもなく、他に好きな人ができたわけでもなく…何も理由は思い当たらないのに、そう考えている主人公。気がつけば、そんなわかるようなわからないような不思議な感情をどこかで味わったことがあるような気がしてしまっていた。もう、姪っ子は恋人に会うことはないだろう…そして、いつしか忘れてゆくだろう…そんなことを考える主人公。だれかをどうしようもなく好きになったり、それでもどうにもならないということがあるのだと知ったりしたあとで、過去に共に同じときを過ごしただれかと、そのだれかのいとしい人と、何も知らずにそこにいた自分自身を思い出すだろうと。かつて、何も知らずに父とその恋人と過ごした私(主人公)のように…。

 この短編集に心の奥底をかき乱された私は、過去に好きだったもう2度と会えないいとしい人のことを思った。ため息とともに浮かんだ言葉は、なぜか「今、幸せですか?」であった。

4167672022だれかのいとしいひと (文春文庫)
角田 光代
文藝春秋 2004-05

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13 角田光代の本」カテゴリの記事

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コメント

こんばんは。

初めて角田さんの本を読んだのがこの小説でした。

好きなのは「海と凧」のラストでフリスビーを投げ合うシーン。

不器用な人ほどとても心が純粋で、せつないんだけどとてもジーンときたのを今でも覚えています。

あ、最近、『これからはあるくのだ』と川上弘美の『ゆっくりさよならをとなえる』を買いました(^^

どちらもましろさんのお気に入り本ですねぇ♪

投稿: Kazuma | 2005.01.12 01:14

Kazumaさん、コメントありがとうございます。

この本がKazumaさんのみっちゃん(勝手にそう呼んでいる)作品のデビューでしたか。私は「まどろむ夜のUFO」がデビューですよ。幻冬舎文庫のオレンジの表紙のものでした。装丁が気に入って買ったのです。今は絶版のようで、他社から文庫化されましたが…。今年こそ、みっちゃんが直木賞を受賞しそうな気がして、過去の作品を読み返している感じです。

『ゆっくりさよならをとなえる』を読んで以来、川上弘美さんの大ファンになってしまいました。それまでのも何冊か読んではいましたが…この方はエッセイが絶妙です。そして、雑誌等で見せる表情が何とも素敵なのです。とってもいい笑顔なんですよ。いい歳のとりかたをしているのだなぁと思っております。

投稿: ましろ | 2005.01.12 10:52

こんばんは。ましろさんの予想通り、角田さん、直木賞受賞されましたね♪福井ファンの僕としては少々残念でしたが、みっちゃん(伝染w)なら納得(^^

みっちゃんの小説はほんの数冊しか読んだことないけど、今、いろいろ読んでみようかなと思っております。またましろさんのブログ、参考にさせてもらいますね。

投稿: Kazuma | 2005.01.14 00:29

ほーっ!やっぱり、みっちゃん受賞したのですね…何度もノミネートされていたので、やっとという感じでしょうか。最近の新作は全く読んでいないので、受賞記念に買って読んでみようと思ってます。

とにかくめでたい!!これで角田ファン増殖間違いなしでしょう…小川洋子に引き続き、角田光代ファンを広めたいと思っております。

投稿: ましろ | 2005.01.14 01:30

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だれかを、好きになったり、友達になったりするのに、 その人を入れる器やなんかにしばられなくていいんだ。 学校でお昼を一緒に食べる相手や、理科室への移動を... [続きを読む]

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