« とらちゃん的日常 | トップページ | 心理療法個人授業 »

2005.01.08

Kの葬列

IMG_0055 装丁とタイトルに惹かれて7年前に買った楠本まき著「Kの葬列」。全2巻の繊細なタッチのミステリー仕立ての美しい佇まいの本である。楠本まきさんは、私の一番好きな漫画家であるが、何にはともかくこの本の絵が一番私好みなのだ。特に1巻目の12章の“夢に 囚われる”という言葉と共に描かれた絵が最高に好きである。そこのページだけで軽く3時間は過ごせる自信がある程だ(って、自慢にならないけれど)。細い華奢な男性の裸体の絵で、手首がリボンのようなもので何重にも縛られており、鉄パイプのようなものに巻きつけられてある。7年経った今でも、その絵が一番好きであることに変わりはない。なぜこの絵が好きなのか…理由はかなり個人的なものであるので、ここでは書かない。好きなものは好きなのだから仕方がないということにしておく。

 舞台はあるアパート。アパートの住人たちは、なぜかそれぞれ住人の一人であったKが死んだことを知っており、死体が何処にも見つからないままKの葬儀を行う。そこに現れるKの部屋を借りることになった少年ミカヤ。彼に住人たちは死体が見つからないのにKが死んだことは紛れもない事実だと話す。Kを殺したのは誰なのか?誰もがKが死んだことを知っているのはなぜなのか?読み進めると、意外な事実がわかってくる。けれど、その事実が本当なのか、妄想なのか、何が本当のことなのか、わからなくなってもくるという不思議なストーリーである。何度読んでもよくわからない。よくわからないからこそ、おもしろいのである。

 モルクワァラという意味不明のものを回収する男性、いつも水中眼鏡をかけている魚住さん、便利屋の鰐淵さん、めったに外出しない人形を作る女性、虚言癖のある少女とその母親、肉屋の男性…登場人物の誰もが何かを隠している。Kとはどんな人物だったのか…聞けば聞くほど、その輪郭はぼやけてしまう。

 “完璧な自分を装いながら 彼は絶望へとひた走る”

 この言葉がいつまでも私の心にひっかかった。

4088482557Kの葬列 1 (1) (マーガレットコミックスワイド版)
楠本 まき
集英社 1994-09

by G-Tools
4088484142Kの葬列 2 (2) (マーガレットコミックスワイド版)
楠本 まき
集英社 1995-10

by G-Tools

もしもお気に召しましたら人気blogランキングへ…クリック宜しくお願いします!

|

« とらちゃん的日常 | トップページ | 心理療法個人授業 »

70 漫画本」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

『Kの葬列』すごい好きです。
ミステリーとしても秀逸で意外な結末でしたが、主人公とKの生き方には考えられます。
Kはアダルトチルドレンのような気がします。周囲の期待する「理想のK」をずっと演じ続ける。それはとても危ういと思うんです。
自分より他人を優先させるため自分を幸せにするのが下手になってしまう。周囲の期待が過剰すぎると逃げ場所が無くなり絶望へとひた走ってしまう。
正直これは僕にとって他人事じゃないです。僕もKに似た部分がある。人の期待に応えて生きてきたし、おととしなんか自殺願望アリアリでヤバかったしね…。
「自分らしく生きる」「自分のために生きる」ってことは大切ですよね。それができないと将来ヤバいことになりそうです。

投稿: ユーキ | 2005.01.09 01:44

ユーキさん、コメントありがとうございます。
自分らしく生きるコト、自分のために生きるコト
って、とても大事なことですよね。
私はそれが出来ずに、ヤバくなったくちで…

中2まではいい子で優等生で何でもできました。
何でも出来なくてはいけないような環境でしたし、
その頃は不可能の文字が私にはありませんでした。
でも、挫折してしまったんですよね。いろんなことに。
完璧を装うことにも生きることにも疲れました。
15歳以降は、自殺未遂の繰り返しで…ひきこもり。
私立の中高一貫の学校に通っていなかったら、
大学なんて行けなかったと思います。
でもまぁ、大学時代も精神面はズタズタでしたけど。
何度救急車に乗ったことか…記憶はないのですが。

だから、今が一番平穏な日々ですね。
心の病気にもしっかりと向き合えているし、
自分の好きなことやりたいことができているから。
生かされているからには、何かまだやれるのかな…
なんて思ったりしています。

投稿: ましろ | 2005.01.09 13:31

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55029/2509954

この記事へのトラックバック一覧です: Kの葬列:

« とらちゃん的日常 | トップページ | 心理療法個人授業 »