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2005.01.07

とらちゃん的日常

IMG_0135 昨年他界した中島らも氏による愛猫に捧げるエッセイ集『とらちゃん的日常』。80にも及ぶ猫写真がたまらなく可愛い。猫好きなら書店で思わず手にとってしまいたくなる本である。著者の過去の悪業の数々を思うと、猫に夢中になる姿は想像すると妙におかしいものがあるけれど、それもまた今となっては微笑ましい光景に思われる。著者はこの本の中でこんなことを書いている。「猫を飼うことで一種のみそぎをしているのではないか」、「もし物を書いていなかったとしたら、ただの半病人のゴロツキだったろう」と。そんなふうに自らの人生を振り返るところもまたいい。

 とらちゃんは、著者のいる1階の事務所と大家の住む2階を行ったり来たりしながら生活している。著者のいないうちに大家さんはトロなどの刺身を与えていて、餌付けしていつの間にかとらちゃんは大家さんのところにいりびたるようになってしまう。この大家さん、なんと一度に12匹もの猫を飼っていたことがあるほどの猫好き。浮気なとらちゃんを取り戻すべく、いい案はないかと考える著者。大家さんの留守にとらちゃんに大トロを与えるべきか否かとか…。そして、とらちゃんのことを不実な女のようだと思う著者。しかし、過去にもペットを取られたことのある著者は大家さんに取られても別に驚きはしないという結論に至るのであった。でも、とらちゃんのことでいちいちちょっとした出来事に悔しがる著者が何ともいい。

 とらちゃんの前に登場するライバルのふくちゃんも、とても愛らしい。片足のないハンデをものともせずにとらちゃんと徐々に警戒をといてゆく。2匹の関係を見守る著者が妙に可愛い。本当は溺愛したいのを我慢しているように思えてしまう。そして、最後に本音がポロリと出る。「とらちゃんが大家さんのところへ行ってしまったおれは、やはりいささか寂しい」と。また、あとがきでもご高齢の大家さんを心配し、猫の身の振り方を案じている。そこもまた何ともいい。やっぱり猫が好きだと思った一冊であった。

4167585022とらちゃん的日常 (文春文庫)
中島 らも
文芸春秋 2004-07

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