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2005.01.24

お母さんという女

IMG_0042 ずっと気になっていた知恵の森文庫。読みたい作品は数知れずなのだが、私は1冊目として文庫書き下ろし(この言葉に弱い)の益田ミリ著「お母さんという女」を選んでみた。将来自分が母のようになりたいようななりたくないような…微妙な存在の我が母。私の年齢で既に子供がいたのだから、尊敬してしまう。私には絶対に無理な話であるし、縁がない話でもあるのだけれど。母から聞く話は、母の持つ2つの顔を想像させ、どちらが本来の母なのかいまだに理解に苦しむことが多い。考えてみると、家族の中で一番長い時間を共有し、一番親しい存在(特に母&娘)であるのに知らないことが意外と多いのである。それに加えて、自分が歳を重ねるたびに母と似てきているという点、これは喜んでいいのか困るべきことなのか非常に迷う。

 この「お母さんという女」には、益田さんと益田さんのお母さんとのいくつものエピソードやおばちゃんと呼ばれる人々の何とも微笑ましい日常について、文章とマンガで描かれている。まえがきとして「あなたのお母さんはいくつあてはまりますか?」の問いがある。

 ①タレントの不幸な話にもらい泣きをする。
 ②紅白歌合戦をまじめに楽しむ。
 ③みのもんたのすすめる食材に目を光らせている。
 ④お尻がすっぽり隠れる上着を好む。
 ⑤写真を撮れば必ずななめに構える。
 ⑥朝の8時15分になるとNHKを見る。
 ⑦旅行先で買ったキーホルダーを鍵に付ける。
 ⑧小さい鞄の中には予備のビニールの手提げが入っている。
 ⑨黒豆ココアに反応した。
 ⑩寒い寒いと言いながら裸足だったりする。
 ⑪中村玉緒がテレビに出ているとつい見てしまう。
 ⑫冬になると「風邪ひいてないか?」と電話してくる。
 ⑬牛乳にきな粉を入れて飲む。
 ⑭干支のせっけんを玄関に飾る。

以上である。益田さんのお母さんは全て当てはまるというから驚きである。ちなみにうちの母は、8個当てはまっている。しかし、せっけんではないが玄関には干支の水墨画(故・祖父の作品)が飾ってあるし、キーホルダーに対してあまり気にすることなく、鍵にはもらいもののキーホルダーを付けて済ませてしまっている。牛乳にはレシチンを入れて飲んでいたりもする。そう考えると、11個当てはまることになる。恐るべき母…である。

 母がおばちゃんっぽく変わってきたなぁと感じたのは、私が上京したときであった。毎週のように届く小包には、一筆添えられていて私の体調の心配や元気に過ごしてますかという内容のものが手作りの品や保存食(主に魚の缶詰)と共に送られてきたのである。初めてのときはふるさとの母の愛情を感じ、涙ぐんだ。そして、即実家に電話をした。けれど、そのうち服が送られてくるようになった。しかも大量に同じデザインの色違いのTシャツが…確かに私の好きだったブランドの服である。しかし、正直これには参った。結構値の張るものであることを知っているからこそ、余計に困った。その後も季節が変わるたびに2年間洋服が送られてきた。都内に住みながら好きなオシャレができない…そんな状態に私は陥った。6年経った今でも普段着として着ているくらいあまり着なかったのである。

 その上、母は手芸がものすごく好きな人間である。パッチワークの化粧ポーチ、ティッシュカバー、何かの物入れ、バッグなどなど手作りの品々が届くのである。これは限りなくおばさん趣味のものであった。私は無印良品でそろえたようなシンプルライフを目指していたのに、それらの物たちが明らかに部屋の空気を変えていた。仕事をしながら夜なべして作った物であることを考えると使うしかなかった。その後、引っ越しを繰り返すうちに、何気なく「私はあんまりこういうのは使わないからさ、お母さんが使ってよ」と言って、少しずつ実家に品々は帰っていったのだが…

 自分でバイトをするようになってからは、ほとんど洋服類の仕送りはなくなった。ような気がするが、冬にはババシャツやカイロやタイツが送られてきていた。都会の方が品揃えが違うし、送ってこなくても買えるのに…20歳の子はカイロをベタベタ貼らないし、オシャレなババシャツを着るのに…でも、母が私のアパートを訪ねてきて、一緒に大きなデパートで買い物をすることはかなり楽しかった。抱えきれないほどの荷物を抱えての買い物。こういうのは、母と娘だからこそできる楽しみである。私とは正反対の超ポジティブ人間の母といると、やっぱり楽しい。実家の部屋は私の理想の部屋(シンプルで白やベージュ系で統一された部屋)にかなり近づいているし、母との時間はとてつもなく楽しい。50を過ぎても少女趣味的で無邪気で無垢な少女のようでもあり、おばさんとしての立場を確立しつつある母。関東人なのに、駐車料金を値切る母。何ともいい。

 益田さんは、「お母さん」で1冊本が書けました。と感謝の思いを綴っているが、私も負けじと母について小説を書きたいくらいである。バリバリのキャリアウーマン(銀行員、秘書、英会話スクールのインストラクター、塾経営&講師など)だった母、英才教育に没頭していた母、通販に弱い母、本だけは際限なく子供に与え続けた母…。母は偉大であると実感できる「お母さんという女」。読んだあとには、ものすごく自分の母親が愛おしくなるはずである。

4334783295お母さんという女 (知恵の森文庫)
益田 ミリ
光文社 2004-12-08

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