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2004.12.09

ゆっくりさよならをとなえる

 先日読んだ「いとしい」が頭の中でふくらんでいるせいか、川上弘美著『ゆっくりさよならをとなえる』(新潮文庫)がとっても愛おしいエッセイに思えた。

 雨蛙をじっと見つめて蛙の視点で考えてしまうとか、蛇を比較的好きでやすらかさすら感じてしまう著者。海外の児童文学に登場する物に強く興味を示す著者。自然の中にあるべき物が不自然の環境にあることに戸惑う著者。古本屋や自分の本棚を見て「くくく」と笑う著者。本や家具などいろんな物を拾ってきてしまう著者。何か食べたい、どうしても食べたいと思いを巡らす著者。月を見るたびに本の一節を思い出す著者。パーティー会場で所在なくなってしまう著者。実家の両親との微妙なやり取りとおかしな関係を持つ著者。作家なのに「日本語はムツカシイ。わたしという人間もムツカシイ。そして生活するということもムツカシイ…」と、どんどん泥沼にはまってゆく著者。どれも愛おしい。著者の人柄がますます好きになってゆく自分に気がつく。

 特に酒屋のレジにて、思い悩む著者が愛おしい。レジにて客が「贈り物です」と包装を頼むと、次の客は「プレゼントです」と言う。次の客は「おつかいものです」と言うのである。三者三様の言葉遣いである。そして、著者は苦心の末にこう言う…「○○○にします」と(これは読んでのお楽しみ)。日本語はすごいものであると、頷きながら改めて思った。そして、日本語はおもしろいのだと。不思議とムツカシイなりにいいものだという気分に私もなってしまっていた。

 今夜は作者と同様に、今まで一番嬉しかったことや悲しかったことを決めることにする。そして、今まで言ったさよならの中で一番しみじみとしたさよならは、どのさよならだったかを決めて、心の中でゆっくりさよならをとなえて、眠りに就こうと思う。初めて告白されたコト、死にきれなかったコト、さよならもまともに言えずに転校していったY君とのさよならのコトを思い出した。好きだと言ってくれたY君。K君のことが好きだったけれど、二番目に好きだったY君。習字教室でおしゃべりしたあの時間、泣きむしだったY君と気が強い妹のAちゃん、Y君のあごのホクロ…どんどん思い出がよみがえってくる。まだ、ちゃんとさよならはできない気がしたのだった。

4101292337ゆっくりさよならをとなえる (新潮文庫)
川上 弘美
新潮社 2004-11

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コメント

「ゆっくりさよならをとなえる」は未読なんですが、ましろさんの記事で読みたくなってきました。
川上弘美の小説はひらがなの使い方が独特で素敵ですよね。

デザイン、変えられました?
・・・あ、変えたって書いてありますね(汗)
こちらも素敵ですよ。
でも写真がupされないと困っちゃいますね、セクシ~キャット第二弾を待ってる私としては(笑)

投稿: nyar | 2004.12.10 10:54

nyarさん、コメントありがとう。
このエッセイはおもしろいですよぉ~!
川上さんの本はタイトルが素敵です。
特にひらがなの使い方なんて、神業かと?
そういう意味では角田光代さんも好きです!
私は、川上さんの人相も好きなんです。
人相で、小説を読む気になったほどですから。

このデザインは、やっぱりゴチャゴチャ感が…
しばらくあきるまではこのまま行こうかと。
画像、アップできましたっ!わ~い!
やり方が変わっただけでした。おっちょこちょいな私。

投稿: ましろ | 2004.12.10 11:32

こんばんは。
今日は花キンなので遊びにきました(意味不明w
新しいデザインいいと思いますよ~。
猫ちゃんも何げに拡大するし☆
川上弘美さんのこのエッセイ、実はさっき書店で手にとったところなのです。結局買わずじまいでしたが(^^;
けどましろさんの記事を読んでかなり読みたくなってきました。酒屋のレジ・・・○○○が気になるw
むぅ・・これを買わず桐野夏生を買った自分がくやまれる・・・。

投稿: Kazuma | 2004.12.10 22:39

Kazumaさん、コメントありがとう!
ぜひ読んで○○○を見つけてください。
そして、「くくくっ」と笑ってください。
はまりますよぉー!川上ワールド炸裂です。
五つ星決定本です♪

投稿: ましろ | 2004.12.11 20:08

こんにちは。トラックバックありがとうございます。
川上さんのエッセイで初めて読んだのは「あるようなないような」なのですが、この一冊が、武田百合子や内田百閒などなどのすてきな方々(作品)に出会うきっかけを与えてくれました。
川上さんは小説やエッセイを途切れることなく書き続けながら、書評などのお仕事をされていることも多いので、川上さんオススメの本に出会えてうれしいかぎりです。

投稿: udon | 2005.01.21 10:41

udonさん、コメントありがとうございます。
私も川上さんの影響でいろんな作家さんの作品に触れることができました。読書の幅が少しずつ広がっていくのを実感できて嬉しく思います。これからも、ブログを覗かせていただきますね。

投稿: ましろ | 2005.01.21 23:17

ましろさん、こんばんは♪

○○○についに出会えましたよ。
そうきたか~って感じですw

この人の文章、雰囲気がとても好きです。
そして読めばお腹が空き、お酒を飲みたくなりますw

一緒に買った『溺レる』も、近いうちに堪能しようと思います。近いうち・・というのは自信がないですけど(^^;

投稿: Kazuma | 2005.02.03 00:11

Kazumaさん、○○○に出会えたのですね。
おめでとうございます!←で、いいのかしら?
この本を読んでから、私はクイズのようにいろんな人に「さて、何と答えたでしょうか?」なんて、言ってます。いまだに正解者はいませんが…w

先日やっと『センセイの鞄』を読んだのですが、『いとしい』や芥川賞受賞の『蛇を踏む』など初期の作品とは、作風が違っているような気がしました。圧倒的に読みやすい作品で、浮遊感はそのまま残しつつ現実的なお話で。どちらも好きなのですが、進化しているのだなぁと何だかじーんとした気持ちになりました。

投稿: ましろ | 2005.02.03 14:18

読んでいる間、○○○はいつ出てくるのだろうと思ってたんですけど、だいぶ最後の方でしたw「あ、これか」と思ったとき、僕も考えたけど結局思いつかなかった・・・やはり日本語はムツカシイw

あ、そうそう、さっきクリックしたらBlogLankingでましろさんのブログが大きなフォントの位置に♪思わず「わ~い」とうれしくなりました(^^

これからも楽しみにしています

投稿: Kazuma | 2005.02.03 22:25

Kazumaさん、ランキング気にしていただいて嬉しいです。先程見てきましたら、26位デシタ…微妙です。残念っ!これでは切腹ですね。最高で17位まで一時期いったのですが、最近はなかなかUPしないのですよぉ。やっぱり、1日2つくらい記事を書かないとダメなのでしょうか?短めの文章の方が読みやすいのだろうなぁとは、常に思っているのですが…もっと読みやすさを追求するとか…。プロのライターさんには、とてもかないません。情報も早いですし、目の付け所が違います。

Kazumaさんはランキング気にしてますか?独特の観点をお持ちのようで、興味深く毎回読んでおりますよ。私も楽しみにしてます。

投稿: ましろ | 2005.02.03 23:01

なんと、すぐに26位になってしまったのですね・・・ちょっと残念無念。UPさせようと思うとなかなか大変みたいですね。いろいろ試行錯誤が必要なのかもしれませんが、ましろさんのブログは「らしさ」があってとても好きなのです。そんな人柄?ブログ柄?に多くの人が引き寄せられてきたらなぁと来る度に思ったりしますよ。

ちなみに僕んとこはランキングにも何も登録してなくて細々と自分勝手にやっておりますw
ましろさんとかのコメントや、見てくれている知り合いの感想なんかが励みになってますね。なので興味を持っていただいて本当にうれしいです♪感想になってない読書日記やヨタ日記ばっかなんすけどねw

お互い一日でも長く続けられたらいいですね☆

ではでは

投稿: Kazuma | 2005.02.04 00:45

Kazumaさんのブログ、私はとっても好きですよ。
ヨタ日記とは…そんなことないですよ。いろんな自分で良いと思いますよ。『自分流』というのが、私の中ではブームです。Kazumaさんは、読書の幅も広いですし、好みが似ているのかしら…とか思ったりしてます。ランキングに登録していないならば、こうさぎを飼ってみては…?

私は無料のブログなので、アクセス解析が付けられず、参ってました。こうさぎ設置後、どんな方が読まれているのか、どの時間帯が訪問者が多いか詳しくわかってしまうのですよ。私のブログとは、相性が悪いみたいでうまく設置できませんでしたが…結構楽しかったりします。何気にはまっております。

投稿: ましろ | 2005.02.04 00:58

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