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2004.12.14

さいごの恐竜ティラン

 母と子の愛情、絆をテーマとして描かれた村山由佳著「さいごの恐竜ティラン」。高校時代に母からプレゼントされたのだが、その当時は何の感動も持てなかった。「所詮、作り話」という冷めた目線でしか物事を見ることができずにいた時期であった。それに加え、親子関係もうまくいっている方ではなかったように記憶している。母の趣味と私の趣味は全く違ったし、読んでいる本の類も全く合わなかった。本代だけはケチらない母のおかげで、私は三島由紀夫や太宰治、花村萬月や中島らもばかりを好んで読んでいた。今思えば、アウトローな女子高生だった。半ひきこもりで登校拒否で、たまに授業に出席しているかと思えば、授業中も読書三昧であった。ホームルームはただ座って読書で無視。休み時間も読書で友達を無視。礼拝は妄想にふけり、小説の行方を気にしているだけ。特に日本史の時間は堂々と三島作品の「禁色」を読んで本の世界に現実逃避していたのである。授業をさぼって屋上でぼんやり早弁をしたりもしていた。1日の読書量は最高5冊であった。そんな私が、母の選んだ本を好むはずがない。

 久しぶりに読み直してみた。本の帯には「愛が信じられなくなったら、読んでください。極限のなかで、命かけ守りぬいた母と子のきずな、やるせないほど哀しくて美しい結末。」とあったからである。母と言い争いになった日のことだった。読んでみて、やっぱり「作り話感」はぬぐえなかった。私には理解できない世界がそこには描かれていた。ファンタジー系だったからだろうか…。それとも相性が悪かったのだろうか。せつない物語だと読みとれるのに、感動がなかったのである。私への母の愛情は日々、ひしひしと感じる。けれど、日々母の言動に傷ついていることも現実であった。とうとう、愛を素直に信じられるような人間ではないことを悟ってしまった。そして、私の心の狭さはなかなかほぐれそうにないと感じた。実に頑固である。

 「親を愛していますか?」
 そんな質問に即答で「はい」と答えられる人はどれくらいいるのだろうか。
 「誰かを愛していますか?」
 この質問はどうだろうか。即答できるだろうか。私は両親を尊敬している。でも、それは愛情とは違うモノであると思っている。だから、私にはこれらの質問の答えに大きな迷いがある。人を信じ過ぎて、裏切られた経験があるからだろうか…両親からの言葉に大きく傷ついた経験があるからだろうか…そして、深く心は傷ついたままである。いつまでも深く、深く、根強く。時間が経っても昇華してくれない。私には、純粋に誰かを愛したことなど記憶にない。寂しい人間である。もう、そんな思いはしたくない。だけどまた、すぐに人を信じてしまう。そして、また傷つく。そんな繰り返しである。こういう人間は意外と多いかもしれない。確かに多いのかもしれない。でも、いつかは本物の愛と出逢えると信じていたい。そう信じられる人間でありたい。信じる気持ちだけは失いたくない。たとえ、また深く傷ついても。純粋過ぎるこんな無防備な私の心は、これからどんなふうに成長していくのだろう。自分のことながら楽しみである。いつか、この本を子供に読み聞かせていたりして…

4834250318さいごの恐竜ティラン―I’ll stay with you
村山 由佳
集英社 1999-09-24

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