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2004.12.02

そして、アンジュは眠りにつく

 天から言葉が降ってくる…そういうことが過去に何度もあった。あんまりたくさん降ってくるから、書き留める手が追いつかなくて、私は戸惑うばかりだった。心とは別に私の手が受け止める頭が言葉を紡いでゆく。それは、静かにひっそりと。でも、しっかりと強い意志を持って。今日はそんな日とよく似ていた。そして、島田雅彦の短篇「そして、アンジュは眠りにつく」を思い出した。

 私たちは何かの偶然で、無限大の暗黒の中にわずかばかり残された明るい、熱過ぎず、冷た過ぎず、適度に潤っていて、時間も移ろうこの星に何の文句があるだろう。けれど、アンジュは光に満ちあふれたこの星に暮らしているのに、なぜか光はアンジュを素通りしてゆく。なぜ私の世界に光は差し込まないの?と。

 盲目のアンジュの世界は独特である。時間軸もわからない。視覚が奪われているから、匂いと触覚と音が乱れ咲き状態である。しかも、誰が語り手なのかはっきりしていない。心に余裕のない人にしてみれば、何といじわるな短篇だろうと思う。けれど、日常感覚が柔らかな人にとっては、心地よく楽しめる短篇だ。「盲」だからこそ、見える世界があることを気づかせてくれる。そして、「精神を病む」ことでしか、見えない世界もあるのではないだろうか…とふと思ってしまった。それは、かなり歪んでいるかもしれないのだけれど…

4101187088そして、アンジュは眠りにつく (新潮文庫)
島田 雅彦
新潮社 2000-07

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コメント

コメントは初めましてです
コンバンハ、ましろちゃん★

アンジュ、フランス語で「天使」
ラルム・ダ・アンジュ
で「天使の涙」

このお話には、そんな言葉が似合いそうだなぁと
思ったのでした

あれ、全然、コメントになっていない?!

投稿: 月子 | 2004.12.03 01:21

月子さん、コメント嬉しいですぅ★
ありがとうっ!感激しちゃいました。

ラルム・ダ・アンジュ…とっても素敵なコメントです。
無知な私は“キレイな響きだわ~”ぐらいにしか
思っていなかったのデシタ…無知で恐縮ですぅ。
フランス映画好きなのにジュテームくらいしか知らないかも…
あっ、ル・モンマルトルとか…それは地名か?
やばいですよね…「ベティーブルー」大好きなのに…
かなりのキェシロフスキ映画好きなのに…

「そして、アンジュは眠りにつく」には、
ぴったりの言葉かもしれません。
月の美しい夜にオススメのお話です。

投稿: ましろ | 2004.12.03 21:59

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