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2004.11.10

愛してるなんていうわけないだろ

 タイトルを見て「読みたい」と思った角田光代著『愛してるなんていうわけないだろ』は、エッセイ本である。なるほどと納得したり、思わず笑ってしまったり、当時24歳の著者の考え方に感心したり…。人生勉強のような、でも軽いタッチのユーモアのような文章たち。特に恋愛についてのエッセイが多い。

 中でも印象的なのは、「では急ぎますから」の話であった。昔の女優さんが、死んでしまった愛人の後を追って自殺する際に書いた遺書の中の言葉である。不倫という言葉もない当時に、兄に宛てたその遺書の中には、事務的なことが少し書かれてあり、最後に「では急ぎますから」で終わっていた。「ちょっとそこまで買い物に」とか「ちょっとタクシー飛ばしてくる」みたいな感覚で、好きな人のもとへ行ってしまったように思える一言である。

 「夜の匂い」というエッセイでは、「歳を重ねていくと夜が長くなる。夜が自由になる」と語る。時間帯を気にせずに靴を履き、夜の中に飛び出す。そして、夜の匂いを感じるのである。一人暮らしをしていた頃、無性にポテトチップスが食べたくなったり、ビールが飲みたくなったり…そんなことで、真夜中に買い物へ出かけたことを思い出した。頬をさすような冷たい風を感じながら早足で歩く。目指すは、深夜までやっているスーパーだったり、コンビニだったり。都会の暮らしは危険と隣り合わせだけれど、夜が便利だった。

 また、「孤独なんてごろごろしているなあと思った」という一節にも心が動いた。当時の著者と同じ年代の私も日々そんなことを感じていたから。20代半ばの狭い世界の中でさえ、誰もが孤独を抱えて生きている。周りを見れば、孤独だらけである。

 10年経って文庫化されたこの本。著者は10年前の自分に教えてあげたくなるという。「あなたのその、本当に楽しい毎日が過ぎていっても、また違うかたちの、その年齢でしか受け取れない楽しみはたくさん用意されているはずだから、たくさん笑ったあとで、かなしく思うことなんて本当に何1つないよ」と。

4122036119愛してるなんていうわけないだろ (中公文庫)
角田 光代
中央公論新社 2000-03

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