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2004.11.27

シルエット

 島本理生が作家になってから、初の文庫化作品「シルエット」を読んだ。著者が17歳で書いたというから、驚きである。“読みやすそう…”という、私の期待をよい意味で裏切ってくれた気がした。今現在も21歳という若さだが、「シルエット」の主人公の<わたし>と同じ17歳の強く人を求める気持ちを等身大で描ききっている。

 父親がいなかった<わたし>は男の人というものをどこか理解できない生き物のように思っていた。そんな主人公が、恋愛をするようになって人との関わりについて学んでゆく姿が丁寧に描かれてゆく。初めて自分の存在を認められた嬉しさという、10代の若さならではの気持ち。本来ならば、自分自身が自分のことを一番愛するべきなのだろう。けれど、主人公の<わたし>は、まだそのことを知らない。自分に自信のない子供にすぎなかった。とにかく、自分のすべてを認めて肯定してくれる存在を必要としていた。

 いくつかいいなぁと思うフレーズがあったので、挙げてみる。

 ・始まりは曖昧なのに終わりはいつだってくっきりしている。
 ・秘密の陰にはかならずと言っていいほど痛みや傷があり…(省略)
 ・すっぽりと覆いかぶさるように生を抱きしめた死の気配は、どこか優しい。
 ・桜は雪に似ているからつらくなる。

 人との関わりの中で、様々なことを学んでゆく主人公。こんな会話が出てくる。「自分の中で、なにかが終わってしまったり、過ぎ去ってしまったと感じたときってあった?」その問いに対して、彼は言う「本当に過ぎてしまったことだから、言ってもしかたないよ」と。主人公はその出来事を彼が言わない限り一生知ることが出来ないのである。それがわかった瞬間、自分が彼と同じ星に生まれただけの他人だということを初めて強く実感する。

 また、こんな場面が好きである。これまで他人に自分を合わせるとこが苦手だった主人公が、「好きな人に合わせるのってちっとも苦痛じゃなく楽しいね」という場面。それから、ふと友達に「お前はいま幸せじゃないの?」と訊かれて初めてきちんと考える場面。若さならではの初々しさがきらきらひかっている作品である。

 そして、17歳の物語を読みながら、自分は幸せかどうか考えてみたりしてしまった私…。答えは、「シアワセ」である。漢字にしたくない雰囲気なのは、希望や夢が叶えられていないから。でも、「シアワセ」であると、即答できるだけ日々考え成長し、生きているのだと改めて思った。

4062749262シルエット (講談社文庫)
島本 理生
講談社 2004-11

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