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2004.11.04

まぶた

 3年前に単行本になり、先日文庫化された小川洋子著『まぶた』。「まだ読んだばかりなのに、もう文庫化かぁ…」と思って本棚から取り出したら、茶色の帯が背表紙の部分だけ色褪せて緑色に変色していた。残酷で不気味な8つの短篇小説集であるこの本は、手触り、匂いまでも感じるほどの丁寧でどこか冷たい描写が、とても印象的である。目覚めてもなお、身体に痺れが残る悪夢のような世界が広がっている。

 表題作「まぶた」は、以前のブログで取り上げた「ホテル・アイリス」とよく似ている。雰囲気や設定、結末までもがそっくりなのだが、まぶたに対しての異常なまでものこだわりが特殊である。目の病気でまぶたを切り取られてしまったハムスター、町で変人扱いされている時代遅れの中年男性N、口のきけない船の操縦者など、どこか何か足りない生き物たちが登場する。

 「まぶた」の中で、小川洋子ならではの短篇だと感じたのは「お料理教室」という短篇である。この作品は強い匂いを放ち、かなり嫌な気分にさせる。ここまで人物やモノを描写するとは…と、白旗を上げたくなる。しばらくは料理を作ることを控えたくなるし、食べたくなくなるし、特に台所には近づきたくなくなる。奇妙だけれど、残酷な現実を目の前に突きつけられているような…見せられているような…何だろうこの気持ち、この思いは…。

 まぶたって、柔らかくて無防備で目を閉じるのに必要なモノ。だけど、この存在を普段は意識しない人がほとんどだろう。けれど、「まぶた」を読めば、自分のまぶたを触ってみるはず。ほらっ、そこのあなたも…やっぱり。触ってるでしょう?他の誰かのまぶたにも触れてみたいでしょう?

4101215227まぶた (新潮文庫)
小川 洋子
新潮社 2004-10

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