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2004.10.19

思い出の本「ノックの音が」

 小さい頃から本好きの私は、本代だけはケチらない母のおかげで、常に本に囲まれた環境にいた。休日の外出は主に街の中心部にある本屋だった。字が読めない1歳半のころから、父の専門書をめくっていたという。本は逆さまだったが…。自分で読めるようになったときに手にしていた本が何なのかは全く思い出せないが、初めて読んだ文庫本だけは、今でもはっきり覚えている。

 小学4年生の頃だった。当時、文庫本とは大人の読み物だと認識していた私は、ひそかに文庫本に憧れを抱いていた。文字が小さいし、漢字が多いし、挿絵がないものがほとんどだった。だから、文庫本をパラパラめくり買ってゆく人の姿を「かっこいい…」と思っていたのだった。そして、見よう見まねで、パラパラと立ち読みするようになった私。けれど、内容が全くわからない。あ行から手当たり次第に手にとってみて、は行で手が止まった。背表紙をながめるとたくさんの同作者の本が並んでいる。パラパラ見ると挿絵があった。「これだ!」そう思った。星新一著「ノックの音が」であった。当時の値段は250円。小学4年生のお小遣いで充分買える値段だった。

 「ノックの音が」は、ショート・ショートが全て“ノックの音がした”で始まる。始まりの一文が同じなのに15通りも話を考えられる作者の天才ぶりに、幼い私は驚くばかりだった。様々なバラエティに富み、サスペンスチックだったかと思えば、しゃれみたいだったり、とても意外な結末が待っていたりする。この1冊と出会ってから、私は彼の作品を全て読もうと決意し、中学生になっても読み続けた。他の作者の文庫本も、もちろん読んだが「一番好きな作家は?」と聞かれれば、「星新一」と答えていた。従姉も彼の作品が好きで、何冊も借りて読んだ。けれど、いつのまにか彼の作品を読まなくなっていた。

 しかし、去年の夏に私は星新一の本と再会した。入院先の病院の図書室に彼の本があったのだ。「かぼちゃの馬車」という文庫本だった。久しぶりに彼の本を夢中になって読んだ。とても新鮮だったし、相変わらずおもしろかった。その本には、彼のショート・ショートが1000をこえたと書かれていた。

 星新一は、1997年12月30日に亡くなっていた。享年71歳。彼は天才だったと今も思う。

4061311131ノックの音が
星 新一
講談社 1972-08

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